2020 Fiscal Year Annual Research Report
拡張π共役分子と分子集合体造形に基づく熱電変換材料の開発
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20H02727
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
辻 勇人 神奈川大学, 理学部, 教授 (20346050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 正和 富山高等専門学校, その他部局等, 講師 (20615827)
小島 広孝 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (70713634)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 熱電変換 / 構造-機能相関 / 有機分子結晶 / 縮環π電子系 |
Outline of Annual Research Achievements |
予備的検討にて巨大ゼーベック効果を示すことを見出した無置換ジベンゾクリセン(DBC)について、結晶中の分子間距離や導電率と熱電変換効率との相関を検証することを目的とした検証を行った。ジベンゾクリセンにメチル基を2個導入したジメチルジベンゾクリセン(Me2-DBC)を辻グループで合成し、山岸グループで単結晶を作成したところ針状の結晶が得られた。これを用いて小島グループで導電率と熱電変換特性を評価した。Me2-DBCは無置換DBCに比べて高い導電率を示したものの、ゼーベック係数は380Kで-22mV/Kであり、無置換DBCに比べて60%程度の値にまで低下することがわかった。パワーファクターについては、導電率上昇の効果により、10^-8W/K^2m程度の値を示し、無置換DBCよりも増加することがわかった。また、DBCの水素原子を重水素原子に置き換えたDBC-d16を新たに合成し、同様に評価を行ったところ、380Kで-114mV/Kという大きなゼーベック係数を示した。この値は、対応する軽水素体(=無置換DBC)に比べて4倍程度のものであり、このゼーベック係数の増大のためにパワーファクターも増大した。無置換DBCも含めてこれまでに得られたデータに基づき、DBCおよび誘導体の各種パラメータと熱電変換特性との相関について考察した。その結果、結晶中の分子間距離とゼーベック係数の極大値を与える温度との間に線形関係があることを見出した。重水素化体DBC-d16が熱電変換特性に与える影響については、結晶中の分子間距離が軽水素体に比べて短くなった影響と、重水素による分子振動の影響が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DBC誘導体に関する評価を行い、構造パラメータと熱電変換特性との関係性を考察したところ、前記のような線形性の関係性が見出された。データの点数が少ないものの、当初計画である、材料パラメータと熱電変換特性との関係性を見出すという目標に対して、一定の方向性を与えるものとして位置づけられると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに多様なDBC誘導体を合成して、データ点を増やすことで、構造パラメータと熱電変換特性との相関関係を精密化することが必要であると考えている。 また、重水素化分子が示す大きなゼーベック係数の発現機構についても検証する必要がある。結晶中での分子間距離が、対応する軽水素体よりも短くなっていることから、この構造パラメータが影響を与えているのか、C-Dが寄与する振動モードの影響が大きいのか、あるいはその両方であるのかについて明確化するために実験と理論計算を交えた研究を進めていきたい。実験的には、分子振動の影響を考慮するために赤外吸収のデータと熱電変換特性との相関の有無について簡単なモデルを用いて検証する方策である。その後、誘導体が何点か増えた時点で、スパースモデリングによる関係性情報の抽出を試み、効率向上のための支配因子を決定に向けての検討を行う方針である。
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Remarks |
辻 勇人 公益社団法人 日本化学会「第38回日本化学会学術賞」、公益社団法人 有機合成化学協会「有機合成化学協会・企業冠賞 富士フイルム・機能性材料化学賞」受賞
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