2022 Fiscal Year Annual Research Report
イネのストレス耐性は水と養分の局所コントロールで向上するか
Project/Area Number |
20H02970
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
宮崎 彰 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (00304668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻本 泰弘 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生産環境・畜産領域, プロジェクトリーダー (20588511)
阪田 光和 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 講師 (50843322)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 陸稲 / 天水栽培 / 深根化 / 根系構造 / 水利用効率 / 施肥利用効率 |
Outline of Annual Research Achievements |
アフリカの天水陸稲栽培において収量の安定生産を阻む大きな制約は水や養分の欠乏である。本研究では、天水陸稲栽培において水利用効率および施肥利用効率を向上させるための技術開発を目的とした。2022年度の結果の概要は以下の通り。 (1)西アフリカ・ベナン中央部にある天水稲作地域のパパゾメ村において2015年から2016年にかけて行った農家調査と圃場試験の結果を論文化した。結果は以下の通り。1)イネの収量は降水量が少なかった2015年に著しく減少し、翌2016年に稲作面積の有意な減少が見られた。農家は低収量農家(LYF, 2 t ha-1未満)と高収量農家(HYF, 2 t ha-1以上)に分けられ、LYFはHYFに比べ収量および翌年の稲作面積比率を有意に減少させた。また、LYFはHYFに比べイネおよび他の主要作物の播種日が有意に遅かった。2)従来の播種日より3~6週間早いイネの播種は登熟後期の土壌含水率の低下を回避し、収量を有意に増加させた。 (2)種子に肥料をコーティングする施肥法は、陸稲の初期生育を促進し、施肥利用効率を高める可能性がある。種子コーティング肥料の適切な種類とレベルをスクリーニングする目的で、その効果を異なる土壌水分条件下で評価した。その結果、対照区(乾籾)と比較し、1)通常肥料(CF)、微生物分解性緩効性肥料(CDU)および化学分解性緩効性肥料(IB)のコーティングで、全乾物重の有意な増加が認められた。2)この効果はCFおよびCDUの高濃度条件下で有意であった。また、3)この効果は湿潤条件下で認められ、乾燥条件下で認められなかった。これらの結果から、種子コーティング施肥の効果は、一部の複合肥料を高濃度に施用した場合に湿潤条件下で認められ、出芽・苗立ちの促進に有効であった。しかし、土壌水分が変動する屋外圃場条件下では、本技術の施用効果が限定されることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
[本年度の進捗] 西アフリカ・ベナン共和国・中央地域における天水陸稲栽培の現状と早期栽培の有効性を学術論文1件で公表した。また、乾燥条件下における深根化の有効性を学会発表1件で報告した。また、深根化を誘導する技術として局所施肥の効果を学会発表2件で報告した。さらに、局所施肥技術として種子コーティング施肥で有効な肥料の種類とレベルをスクリーニングし、その効果を異なる土壌水分条件下で比較し、学会発表1件で報告した。 [課題] 当初の予定では陸稲の深根化および局所施肥に関する研究についてそれぞれ1報を2023年度中に投稿する予定であった。しかし、データの誤差を検証する必要性が生じ、実験反復を繰り返したため、結果のとりまとめに遅れが発生した。また、東アフリカ・マダガスカルにおいて、同様に種子コーティング施肥の圃場試験を行った。現地試験を実施できたことは大きな前進であったが、コロナ禍で現地試験の開始が1年遅れ、圃場では害虫、動物による食害がみられ、十分な結果を得られなかった。これらのことから2022年度の進捗は「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
局所施肥(窒素)は、深根長割合を変化させたが、深根長や全根長に有意な効果を与えなかった。種子コーティング施肥(化成肥料)は湿潤条件下で初期成長を促進したが、乾燥条件下で効果が認められなかった。種子コーティング施肥の効果を圃場レベルで再検討する必要性はあるが、乾燥条件下での施肥による成長制御には限界が認められ、濃度障害にも注意を要する。 2024年度は前年度結果のとりまとめをしつつ、新たに種子プライミングによる成長促進効果を検討する。種子プライミングはこれまでもイネにおいて検討されてきたが、乾燥条件下での検討事例は少ない。そこで、種子プライミングが乾燥条件下において出芽・苗立ち、根系発達およびその後の成長に及ぼす効果をポット、根箱、圃場レベルで調査する。
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Research Products
(6 results)