2021 Fiscal Year Annual Research Report
北極域の植生変化予測に向けた樹木定着プロセスの解明
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20H03016
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
宮本 裕美子 信州大学, 農学部, 助教(特定雇用) (50770632)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 気候変動 / 菌根菌 / 宿主特異性 / 生物間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
温暖化に伴い、森林分布が拡大することが予測されている。樹木はその成長に必要な養水分を根で共生する外生菌根菌を介して吸収しているため、実生の定着や分布域の拡大には菌根共生が必要である。本研究では、樹木の生育していない非森林帯に樹木実生が定着するために適した条件を検証することを目的とする。当該年度は、菌根菌埋土胞子の特定に向けたバイオアッセイ試験のデータ解析を実施した。シベリア北極域の森林―ツンドラ境界で採取した土壌にダフリアカラマツ苗を植え、温室で育苗した。結果、合計で外生菌根菌11種の形成が確認された。そのうちカラマツ属に特異的なヌメリイグチ属3種は森林境界から30km離れたツンドラ帯の調査地からも確認され、宿主不在のツンドラ帯にも広範囲に胞子が分布している傾向が初めて明らかとなった。これは、カラマツがツンドラ帯へ侵入する際に、ヌメリイグチ属の埋土胞子が菌根感染源となる可能性を示唆しており、学術的に重要な知見である。次に、実生の乾燥重量を測定し、菌根形成によってカラマツ成長が促進されるのか検証した。結果、菌種数と実生の乾燥重量に正の相関が見られたが(P=0.07)、値のばらつきが大きく傾向は明瞭ではなかった。また出現頻度の高い菌種について実生の乾燥重量を比較したが、特定の菌種による実生の成長促進効果については本バイオアッセイからは明らかではなかった。以上の解析を論文にまとめ国際誌に発表した。
現地土壌を用いたバイオアッセイ試験では菌根形成したサンプル数(実生数)が少なく、菌根菌による実生成長へ効果は不明確であった。そこで新たにカラマツ苗を準備し、培地から菌根菌種を接種する試験を進めた。5ヵ月温室で育苗した結果、Tomentella terrestrisは菌根形成率が高かったが、カラマツ特異的なショウロ属やヌメリイグチ属は菌根形成率が低かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カラマツ実生の生育に対する菌根形成の効果について、成長の早い菌種については成果が得られているが、成長が遅く感染率の低い菌種については追加実験が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
培地の改善やサンプル数の増加により実験を遂行する。
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Research Products
(4 results)