2021 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of renal factors promoting the onset and severity of non-obese type 2 diabetes
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20H03157
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
鈴木 浩悦 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (50277662)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 腎臓 / 糖新生 / 細胞増殖 / D-アミノ酸酸化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 糖尿病に対する腎実質寄与:糖尿病発症期のDEKにおける腎実質の半減は糖尿病に伴う病態を全般的に軽減した。さらに、DEKでは腎尿細管における細胞増殖活性が亢進しているが、片側腎摘出によって残存腎の細胞増殖活性はさらに増大し、術後11週を過ぎると、腎重量は偽手術群の同側の2倍に達し、その後糖尿病を発症する個体が現れた。一方、生後の腎臓の成長期である40日齢(糖尿病発症前)に片側腎摘出を行うと、糖尿病の発症が促進され、腎重量は3倍以上に増大した。 2 発症期の腎臓における糖尿病誘導因子:DEKにおける糖尿病発症と非発症、DEKの母系統であるLEA-PET系統のラットに関して、腎臓の網羅的遺伝子発現解析を実施した。結果は令和4年度にまとめる予定である。腎組織におけるグルコース代謝に関連した蛋白質(グルコーストランスポーター、糖新生の律速酵素、インスリン分解酵素)の解析については、条件出しまでを行った。 3 蔗糖負荷の影響:DEKの糖尿病は腎実質の増大やインスリン分泌能の異常と言った遺伝的要因によると考えられるが、一般的には環境要因も糖尿病の発症に影響を及ぼす。糖尿病発症前の40日齢から蔗糖水溶液を飲水させ、糖尿病の発症に影響するのか否かを調査したが、蔗糖投与が糖尿病の発症を促進することはなく、腎重量に対しても影響はなかった。 4 遺伝要因の解析:連鎖解析により12番染色体上に腎重量の増大に関連する遺伝子がマップされ、この領域にD-アミノ酸酸化酵素(DAO)遺伝子の機能喪失型変異が同定された。この突然変異はLEA系統に由来するが、同系統で腎実質の増大は報告されていない。 以上の結果から、DEKの糖尿病は尿細管細胞の増殖活性の亢進を伴う腎実質の増大が原因となっており、その異常にはDAOの欠損が関わっていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腎臓における糖代謝に関連した蛋白質の解析については条件出しに時間を要したが、RNA-seqによる遺伝子発現の網羅的解析の結果が得られたため、この解析結果に基づいて蛋白質の解析を行った方が効率的であると考えられる。その他の実験については計画通り進んでいる。一方、当初最も時間を要することを想定していた主要な原因遺伝子の同定に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝解析で腎臓サイズの増大にD-アミノ酸酸化酵素(DAO)の欠損が関与することが明らかになったため、この異常がどの様なメカニズムで腎臓サイズを増加させるのかということに焦点を当てる必要がある。さらに、腎臓サイズの増大がどの様に糖尿病を発症させるのかについても、これまでと同様に解析を進める。DAOが欠損すると、腎臓においてD-アミノ酸が分解されずに、血中および組織にD-アミノ酸が蓄積するが、DAOを欠損するLEA系統では、DEKと同様な腎臓の表現型は見られない。一方、一部のD-アミノ酸については、最近になって腎臓の機能や糖尿病との関連性が報告されている。いずれにしても、腎臓組織の網羅的な遺伝子発現解析により、腎組織において細胞増殖や代謝に関わる遺伝子の発現がどの様に変化しているのかを明らかにすることで、今後の研究の展開に繋がると考えられる。
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Research Products
(5 results)