2020 Fiscal Year Annual Research Report
Roles of placental amino acid transport system on the fetal metabolic programming
Project/Area Number |
20H03159
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
的場 章悟 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 専任研究員 (20585202)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 胎盤 / アミノ酸トランスポーター / 代謝プログラミング / SNATファミリー / 胎盤特異的ノックアウト |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類では胎盤での栄養供給に問題があると、胎児は低栄養状態に陥り深刻な生育異常を示す。しかし、その重要性にも関わらず、胎盤における胎児への栄養供給機構とその破綻が胎仔に与える影響の詳細はほとんど分かっていない。本研究では、アミノ酸トランスポーターであるSNATファミリー遺伝子の多重ノックアウトおよび胎盤特異的ノックアウトマウスを用いて、胎盤でのアミノ酸供給機構の破綻が遺伝的に正常な胎児へ及ぼす影響を包括的に理解することを目的とする。本年度はSNATファミリー遺伝子の新規KOマウスライン作成を中心に進めた。 (1) Slc38a1, Slc38a2, Slc38a4のトリプルKOマウスの作製および解析。 SNATファミリーをコードするSlc38a1, Slc38a2,Slc38a4遺伝子は、マウスでは同じ15番染色体領域の約500kbpの領域内にタンデムに並んで存在する。そのため、マウス受精卵へのCRISPR注入法を用いて3遺伝子の全領域を欠損するマウスラインを樹立したところ、KO胚は着床後の比較的早い段階で胎性致死を示すことが分かった。今後はさらに詳細な表現型解析を進める予定である。 (2) SNAT遺伝子の胎盤特異的コンディショナルKO(cKO)マウスの作製。 Slc38a4単独の胎盤特異的cKOマウスを作成し、Slc38a4の胎盤での機能欠損が胎児発生に与える影響を解析する。Slc38a4にloxpを挿入したfloxマウスは、昨年度にCRISPRノックイン法を使って挿入を試みたが、まだ確立に至っていないため、種々の手法を検討して樹立を進めている。胎盤特異的Creマウスについては、胎盤の種々の細胞種特異的にCreを発現するラインを新規に樹立中であり、いくつか使用可能なラインを得ているため、これらを利用する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず計画していた通り、SNATファミリー遺伝子のトリプルノックアウトマウスの作製に成功した。このマウスはSNAT4/Slc38a4の単独ノックアウト(出生まで至るものの胎盤サイズ・胎仔サイズともに3-4割減少)よりも重篤な表現型を示すことが想定されたが、予想通りSNATファミリーKOは着床後の比較的早い段階で胎性致死を示すことが明らかになった。表現型について詳細に解析を進めており、まとまり次第学会および論文として発表予定である。 また、コンディショナルノックアウトについては、その作製技術についてCRISPR法をベースとして注入法・二段階エレクトロポレーション法など色々な手法を検討してきた。少なくとも胎盤特異的なCreマウスの作製については注入法をベースとして安定して作出できることが分かった。Loxpの導入も技術的には可能だが、二か所同時に高効率でノックインするため、二段階エレクトロポレーション法をベースとしてさらなる検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度はSNATファミリー遺伝子のトリプルKO(TKO)マウスの表現型解析をさらに進める。これまでの研究からTKO胚はE11.5までに致死であることが分かった。今後はさらにステージをさかのぼり、E6.5~E10.5などのステージを解析する。細胞増殖、および細胞分化への影響は、増殖・アポトーシス・細胞種特異的マーカーなどによる組織解析に加えて胎盤全体を用いたトランスクリプトーム解析も検討する。またその基盤情報として、SNAT1, SNAT2, SNAT4の各発生段階での局在ダイナミクスを免疫組織化学などにより詳細に解析する。 一方でSNAT4遺伝子のコンディショナルノックアウト(cKO)マウスの作製については、二段階エレクトロポレーション法をベースとしてさらに条件を検討して、loxp導入系統を確立する。まずはCAG-Creマウスとの交配により、通常のKOマウスと同様の表現型が出るかを形態・遺伝子発現も含めて確認する。その後胎盤特異的Creマウスとの交配により、胎盤のcKOマウスを作製する予定である。さらに、Slc38a1, Slc38a2, Slc38a4のすべてを同時にKOできるトリプルcKOマウスも作成する。
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