2023 Fiscal Year Annual Research Report
安全・簡便・短工程有機合成を実現する遷移金属触媒反応の開発
Project/Area Number |
20H03368
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
眞鍋 敬 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (00251439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小西 英之 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (20565618)
山口 深雪 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (70548932)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 有機化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、安全・簡便・短工程有機合成を実現することを目指し、以下の①~③を可能にする新規遷移金属触媒反応の開発を目的とするものである。①毒性ガス代替化合物を用いる汎用性の高い安全・簡便触媒反応。②空気下・開放系での簡便触媒反応。③入手容易な基質を用いる触媒的位置選択的アリール化。令和5年度は以下の研究成果を得た。 ①SO2代替化合物であるピロ亜硫酸カリウムを用いるCu触媒反応の検討において、基質としてヨードアレーンとアリールボロン酸を用いるクロスカップリング反応による非対称ジアリールスルフィド合成法を開発した。様々なスルフィド類が良好な収率で得られることが明らかとなった。また反応機構の実験的および計算化学的研究から、SO2が基質のボロン酸と反応したのちに脱酸素化する過程について、推定反応機構を提案することができた。 ②空気下・開放系でのCO代替化合物を用いるPd触媒的カルボニル化反応の機構を明らかにする目的で、速度論的解析および低温NMR実験を引き続き行った。その結果、塩基であるDBUとCO代替化合物であるギ酸フェニルとが反応した、DBUのホルミル化体が速やかに生成するが、それは平衡反応で元に戻り、CO生成はギ酸フェニルから起こることが示唆された。 ③無置換ピロールの位置選択的Pd触媒的アリール化反応の開発検討において、位置選択的反応の反応条件の最適化研究を行った。その結果、2,5-ジアリール化体合成の反応条件を確立できた。さらに選択性は十分には高くないが、これまで例のない3位選択的アリール化の反応条件を最適化することができた。また、トリプタミン誘導体の位置選択的かつ脱芳香族的アリール化反応の検討により、側鎖に置換基をもつトリプタミン誘導体からピロロインドリン体の一段階合成を比較的良好はジアステレオ選択性で実現できることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①Cu触媒による非対称ジアリールスルフィドを良好な収率で与える手法を確立することができた。またSO2が基質に取り込まれた後に脱酸素化する過程の合理的な反応機構を提唱することができた。今後、種々のスルフィド誘導体の合成に展開できると考えている。②反応中に現れる化学種の生成プロファイルが明らかになりつつある。今後は、この反応系のさらなる効率化を目指し、反応機構にもとづいた試薬設計に活かしたい。③無置換ピロールからの2,5-二置換ジアリール化体合成において条件の確立を達成できた。今後、種々の置換パターンを有するピロール類の合成へと展開できる可能性がさらに拓けた。また3位選択的アリール化というこれまでに例のない反応を実現できた。側鎖に置換基を有するトリプタミン誘導体の脱芳香族的アリール化を経由するピロロインドリン合成反応の検討を行い、比較的高いジアステレオ選択性で反応が進行することも明らかとなった。今後、トリプトファン誘導体を基質とする反応へと展開する足掛かりができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①SO2代替化合物であるピロ亜硫酸カリウムを用いる触媒反応の検討において、これまで反応性が乏しく適用外だった基質を試みる。また、別の求電子性基質を用いる反応へと応用したい。 ②空気下・開放系でのCO代替化合物を用いるPd触媒的カルボニル化反応において、これまで得られた知見に基づき、最終的な反応条件を確立を目指す。 ③無置換ピロールの位置選択的Pd触媒的アリール化反応の開発検討において、様々なアリール化パターンをもつピロール類の網羅的合成法の開発の足掛かりを得る。また、トリプタミン誘導体の脱芳香族的アリール化を経由するピロロインドリン合成反応の継続的検討を行い、光学活性基質であるトリプトファン誘導体を用いる反応の開発を図る。
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