2020 Fiscal Year Annual Research Report
不安障害の制御を目指した霊長類ストリオソーム関連回路の機能解明
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20H03555
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
雨森 賢一 京都大学, 高等研究院, 特定拠点准教授 (70344471)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 霊長類 / DREADD / 不安障害 / 意思決定 / 線条体 / ストリオソーム / 接近回避葛藤 / 化学遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
霊長類において不安障害に因果的に関わると考えられる神経回路は、大脳皮質-大脳基底核に広く分散して存在すると考えられてきた。近年、応募者らの研究から、これらの「不安回路」の下流域に線条体ストリオソーム構造があることがわかってきた。この線条体ストリオソーム構造は、腹側被蓋野や黒質緻密部 (SNc) にあるドーパミン (DA) 細胞に対する直接投射があることが知られている。このことから応募者は、不安障害で見られる罰の過大評価はストリオソームによる DA 制御の異常によって引き起こされる、という仮説を立てた。この仮説を検証するために、化学遺伝学などの遺伝学的手法と、電気刺激法による経路同定法を用いて、霊長類の辺縁皮質からストリオソームへ至る神経経路を同定し、ストリオソームが DA 細胞をどのように制御するのかを解明する。まず、罰の価値判断を定量的に評価できる接近回避の葛藤課題をマカクザルに訓練し、これら経路の選択的操作により罰の価値判断がどのように変化するかを行動レベルで評価する。辺縁皮質、ストリオソーム、DA 細胞のそれぞれから課題に関連した神経応答・電場電位を同時記録し、ストリオソーム経路の選択的操作により DA 細胞応答がどのように変化するかを単一細胞レベルで分析する。このように、不安障害に因果的に関わる局所回路が、どのように DA 応答を制御し、どのように「不安」状態を引き起こすのかを、ヒトと相同な脳構造を持つ霊長類において包括的に明らかにし、ヒトの精神障害の治療につながる神経操作技術の確立に寄与する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、化学遺伝学による経路選択的な操作の基盤となる研究として、NAc-腹側淡蒼球の経路選択的な操作の実験を始め、技術的な基盤が整いつつある。また、昨年度は、これまで、蓄えてきた本研究課題と関連する研究成果を論文として発表することができた。線条体ストリオソームに投射するpACC、cOFCの微小刺激が罰の過大評価を引き起こすことを発見し、EJNに発表した。これにより、cOFCからストリオソーム系の化学遺伝学による制御が現実的なものとなりつつある。また、ヒトとマカクザルの接近回避葛藤におけるpACCの神経応答が相同であることを発見した。ヒト側坐核が、うつ病によって葛藤に対する応答が低下することを発見し、Biol. Psychiatry誌に発表した。この研究は、ヒトとマカクザルのpACCの葛藤に応答する活動が一致することを示し、現在行っている研究がヒトへの知見につながることを示すものとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進めている化学遺伝学によるの基盤研究を進める。また、線条体ストリオソームに投射するpACC、cOFCの領野の同定が行えたことから、この領野をターゲットとして、cOFCからストリオソーム系の化学遺伝学による制御へと発展されせる。
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