2021 Fiscal Year Annual Research Report
抗横紋筋抗体の病因論的自己抗体としての意義とPD-1ミオパチーの疾患概念の確立
Project/Area Number |
20H03592
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 重明 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (50276242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西野 一三 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第一部, 部長 (00332388)
大貫 優子 東海大学, 医学部, 准教授 (20384927)
北野 滋久 公益財団法人がん研究会, 有明病院 がん免疫治療開発部, 部長 (60402682)
中根 俊成 日本医科大学, 医学部, 准教授 (70398022)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 横紋筋抗体 / PD-1ミオパチー |
Outline of Annual Research Achievements |
Programmed cell death 1 (PD-1)経路を抑制する抗体薬であるニボルマブやペムブロリズマブなどの免疫チェックポイント阻害剤が登場し,本邦でも幅広いがんで適応が広がっている.がん患者の生存率が上昇し,革新的ながん免疫治療として注目を集めている.免疫チェックポイント阻害剤が広く使われるようになるにつれ,これまで経験しなかった免疫関連有害事象 (immune-related adverse events, irAE)が出現するようになった. 免疫チェックポイント阻害剤を使用する機会が増加しており,神経・筋に関連したirAEsは以前考えられていたよりも高頻度であることがわかってきた.重症筋無力症 (myasthenia gravis, MG) と炎症性筋疾患(筋炎)の特徴を有する筋疾患「PD-1ミオパチー」がirAEsの代表的な臨床像である.その頻度に関して,最新の副作用データベース,発表された研究論文,製薬メーカーからの副作用報告情報を総合的に検討した.その結果,PD-1ミオパチーの発症頻度は免疫チェックポイント阻害薬を使用したがん患者の1%程度と推定している.またPD-1ミオパチー以外のirAEsとして自己免疫性脳炎やギランバレー症候群などの多発神経根炎があるが,これらの臨床特徴についても明らかにした.これらの研究成果を基にしたirAE副作用対策は,学会のシンポジウムや教育講演で取り上げられ,がん免疫療法の安全に寄与している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PD-1ミオパチーの症例を蓄積し,筋症状,検査所見,治療と予後について解析を進めている.また病理学的解析として筋病理では筋線維の壊死・再生の分布が集簇的に認められ,周囲にリンパ球浸潤が観察されるのが特徴的である.またTリンパ球の表面マーカーやmajor histocompatibility complex class Iなど免疫関連分子の発現についても解析を進めており順調に進行している. 疾患動物モデルは雌性SDラット(12週)に抗横紋筋抗体陽性の患者血清 1 mLを腹腔内投与することを予定していた.しかし疾患再現ができず,Kv1.4リコンビナント蛋白を抗原とした動物モデルに変更し研究をすすめている.
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Strategy for Future Research Activity |
PD-1ミオパチーの臨床像については引き続き検討を進めていく予定である.特に致死的な合併症である心筋炎も併発した症例についても注視して症例を蓄積していく. また患者血清を用いた受動免疫では,疾患を再現できない可能性が考えられた.現在,抗原(横紋筋分子であるKv1.4リコンビナント蛋白)投与による能動免疫の疾患動物モデルの作製に着手している.またPD-1抗体製剤のニボルマブ投与により,自己免疫反応の増強も確認する.
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