2021 Fiscal Year Annual Research Report
患者本人の主観的評価(PRO)を活用した循環器疾患レジストリデータの統合的解析
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20H03915
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
香坂 俊 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30528659)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
隈丸 拓 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (00511461)
関 倫久 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30528873)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 医療の質 / アウトカム / 冠動脈疾患 / 心房細動 / 心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
循環器疾患領域での臨床研究の手法として、数多く前向きランダム化試験(RCT)が行われている。しかし、現代の RCT はそのほとんどが全死亡、心血管死亡といった「臨床的なイベントの発生」の評価を一次エンドポイントとして実施される。こうしたイベントに関する情報は患者予後と直結しているが、慢性疾患においては患者側の視点を備えたQOLなどのエンドポイントを重要視しなくてはならない。本研究では、既存の多施設共同疾患登録レジストリのプラットフォームを用いて循環器腫瘍疾患に特異的な Patient-Reported Outcome (PRO)ドメインの情報収集を行う。カバーする疾患としては、循環器領域の代表的な疾患でありながら従来のQOL評価法では定量化が困難であるとされた不整脈疾患(心房細動)、そして 医療資源に対する費用対効果がとみに問題となっている心不全を扱うこととしている。
心房細動領域に関しては、日本の外来患者で3000例においてPROの各ドメインの分布の確認が終了している(JAHA 2021)。また、その中心的な治療法としての位置を閉めつつあるカテーテルアブレーション手技を行ったケースでのPROがどのように改善するか、その定量的な評価を行っている(Heart Rhythm 2022)。心不全に関しては、新規利尿薬であるトルバプタムの実地使用とアウトカムの検証(Scientific Reports 2021)、またスマートデバイスとPROの比較検討などが実施された(Journal of Clinical Medicine 2021)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年3月現在、急性心不全退院予定の患者、心房細動の通院予定の外来患者 を対象に、同意を得た上でそれぞれKCCQ、そしてAFEQTによるPRO評価を実施している。PRO評価法としては、数多くの国際的な臨床試験に用いられ、2017年FDAにより医療技術評価ツールとしての認証も受けた 米国John Spertus教授の開発した循環器疾患特異的な評価表を用いて、前向きに収集を行っている。
PROは専属臨床研究コーディネイター(CRC)が直接患者から収集し、6ヶ月と12ヶ月時点でも追跡収集を行っている。基本臨床項目も同時にカルテやレポートから入力し、必要に応じてクエリ(プロトコル上疑義のあるデータについて医師に問合せ)を行っている。ハードエンドポイントである死亡、心血管イベント、心不全入院、出血事象など臨床的なイベントの追跡は2年間行う予定としており、そうした予後との関連評価も実施していく予定である。
研究系計画に大きな変更はなく、心不全に関しては2022年3月現在で4500例弱、心房細動に関しては3300例の登録を無事に終了している(それぞれ2年間予後を追跡予定)。心房細動症例に関しては1年後のPROの取得も終了しており、概ね研究も終盤に入っている。心不全に関しては登録を続ける一方で、予後に関する情報の収集、そしてコストに関するデータを習得していく予定である。補足的に冠動脈疾患に関してはSAQ(Seattle Angina Questionnaire)を用いる予定であり、現在そのパイロット研究に向けて準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
全般的に当初の実施計画書に記された予定通りに進行しているといえる。本年は昨年に引き続き、データ解析ならびにその結果の論文化の作業のウエイトが大きくなっていくことが想定されており、東京大学医療品質評価学講座の隈丸淳教授に人件費を含む必要経費を計上している。
心房細動データに関しては集中的に解析と予後情報の集積を進める予定である。心不全に関しては新たに認可された薬剤が複数存在し(ARNIならびにSGLT2阻害薬)その導入のベースラインとなる薬剤使用に関しての解析が実施されている。冠動脈疾患に関してはより大きな規模でのデータ集積の準備中である。
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Research Products
(9 results)