2020 Fiscal Year Annual Research Report
Promotion of neuronal remodeling by activating signal pathways involved in synaptogenesis
Project/Area Number |
20H04040
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
宮井 和政 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 教授 (60283933)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 樹状突起スパイン / 運動学習 / 強心配糖体 |
Outline of Annual Research Achievements |
シナプス新生による新たな神経回路の構築は、成熟期における学習や神経障害からの機能回復に重要な現象である。我々は、ニューロトリプシンにより切断されたアグリンC末端断片が成熟期におけるシナプス後部構造(樹状突起スパイン)の新生を促進することを発見した。アグリンC末端断片はナトリウム‐カリウムポンプに結合してその活性を調節することが報告されており、同様の作用を有する強心配糖体にも樹状突起スパインの新生を促すことが期待される。我々は、強心配糖体ジゴキシンを脳内ナトリウム‐カリウムポンプを活性化する濃度で投与すると、樹状突起スパインの新生と運動学習が促進されることを見出している。ただし、この濃度はヒトに対する臨床的投薬量の10倍以上である。そこで2020年度の本研究では、ヒトへの投薬濃度、またはそれ以下の濃度のジゴキシン投与でも樹状突起スパイン新生や運動学習能向上が引き起こせるかどうかを中心に検討した。その結果、ヒトへの投薬量に相当する濃度、およびその4分の1の濃度の低濃度のジゴキシン投与でも、大脳皮質および海馬においてスパイン新生が促進されることを明らかにした。新生スパイン密度はジゴキシン濃度依存的に増加していた。また、低濃度ジゴキシンは、成熟期における活動依存的なスパイン新生が障害されているニューロトリプシン遺伝子欠損マウスの運動学習能を有意に向上させ、対照となる野生型マウスと同レベルの運動学習能へと改善させた。この成果は、神経障害からの機能回復にもジゴキシンが有用である可能性、およびヒトへの臨床応用への可能性を示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
薬剤刺激が樹状突起スパイン新生に及ぼす作用に関しては、低濃度ジゴキシンのみの検討にとどまったものの、次年度以降に計画していた運動学習能の解析を先行して実施できたこともあり、全体としては概ね順調に進展していると評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
低濃度ジゴキシンが樹状突起スパイン新生の促進と運動学習能の向上を引き起こすことを明らかにできたので、今後はジゴキシンと他のシナプス形成促進を期待できる薬剤、特にBDNF経路を活性化するDAEEとの併用作用を検討する予定である。さらに、低濃度ジゴキシンの運動学習能に対する促進作用が成熟期のスパイン新生に障害のあるニューロトリプシン遺伝子欠損マウスで顕著であったことから、神経障害からの機能回復にも応用が期待できることが判明したため、まずは物理的な脳障害モデルマウスの作成し。四肢運動の機能回復を解析する実験系を樹立し、神経機能障害からの回復に対する低濃度ジゴキシンの影響の解析を進めていく。
|
Research Products
(2 results)