2022 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋適応の性差を司るアンジオテンシン受容体制御機構の解明
Project/Area Number |
20H04082
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
吉原 利典 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (20722888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
町田 修一 順天堂大学, 大学院スポーツ健康科学研究科, 教授 (40421226)
内藤 久士 順天堂大学, 大学院スポーツ健康科学研究科, 教授 (70188861)
柿木 亮 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 非常勤助教 (70614931)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アンジオテンシンII1型受容体 / 性差 / トレーナビリティ / 骨格筋萎縮 / サルコペニア |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、AT1R組換え型アデノ随伴ウイルスベクターによる遺伝子導入法を用いて、AT1Rの発現制御が雌ラットの筋萎縮時におけるTGF-βシグナル応答に及ぼす影響について検討した。6週齢のWistar系雌性ラットを用い、片脚のヒラメ筋に生理食塩水で希釈したAT1RショートヘアピンRNAを注入した。反対側には生理食塩水のみを投与しコントロール脚とした。4週間の回復期間後、ラットを対照群、尾部懸垂1日後または7日後の尾部懸垂を実施した。本研究の結果、AT1受容体遺伝子の発現制御により、受容体の発現量はmRNAレベルでは20%程度、タンパクレベルでは10%程度減少した。そして、雌性ラットにおいて7日間の尾部懸垂に対する筋重量の低下や萎縮率は有意に軽減された。これまで我々は、雌性ラットでは典型的TGF-βシグナル伝達の活性化が顕著に認められることを示してきたが、本研究ではSmad2/3リン酸化率の有意な変化は認められなかった。また、筋萎縮関連遺伝子であるMuRF1 mRNA発現量は筋萎縮に伴い増加していたが、AAV投与の影響は認められなかったことから、筋萎縮の軽減にはTGF-βシグナル伝達以外の経路が関わっている可能性があるため、引き続き分析を行う予定である。また、サルコペニアモデルにおいて、ラットの加齢による相対筋重量の変化とその性差について検討したところ、雄性ラットおよび雌性ラットの前脛骨筋重量は24ヶ月齢において有意に低値を示し、6ヶ月齢に対する比率は雌性ラットと比較して雄性ラットで有意に小さかった。また、AT1R発現量は高齢ラットの前脛骨筋で有意に低値を示し、その発現量には性差が認められ、雄性ラットのAT1R発現量は雌性ラットと比較して有意に高値を示すことが明らかとなった。一方、雄性ラットにおけるAT1R発現量の発現低下はサルコペニアの進行に影響を与えないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト骨格筋のタンパク・遺伝子発現解析において、数種類の特異的抗体を検討したものの、ヒトとラットにおける骨格筋タンパクの発現解析に関する妥当性・信頼性のある結果は得られていない。しかしながら、当該年度の主要な課題であった廃用性筋萎縮やサルコペニアにおける性差に関する実験・解析は大部分が完了しており、AT1Rの発現制御が①雌性ラットにおいて7日間の尾部懸垂に対する筋重量の低下や萎縮率の軽減に貢献すること、ならびに②高齢ラットの前脛骨筋におけるAT1R発現量には性差が認められるが、雄性ラットのAT1R発現量の低下はサルコペニアの進行に影響を与えないことを示すことができた。以上のことから、現在までの進捗としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の想定に反し、ヒト骨格筋のタンパク・遺伝子発現解析により、導き出した候補分子の発現特性の性差がヒトとラットでは相反することが判明したため、数種類の特異的抗体を検討・作成したものの、ヒトにおける骨格筋タンパクの発現解析を完了させることができなかった。そのため、ヒト骨格筋タンパクの発現解析についは、新たに抗体を作成し、引き続き妥当性・信頼性の検討を行っていく必要がある。加えて、ヒト骨格筋におけるAT1R発現量の性差やAT1R発現の変化を調節する機構について、環境要因による遺伝子発現調節筋機構の違い(マイクロRNA、ヒストン修飾等)に着目した検討を行う予定である。なお、当該年度に行った研究成果の公表についても積極的に行っていく。
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