2020 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding adaptation process of human bodily movements in accordance with various task contexts by means of corticomuscular coherence
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20H04091
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
牛山 潤一 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (60407137)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脳波 / 筋電図 / コヒーレンス / 感覚運動統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,脳-身体システムが運動を構成する多様なパラメーターの兼ね合い(=運動の『文脈』)に身体運動を適応させているのか,その情報処理過程の生理学的機序を,脳波と筋電図の相関を評価する「皮質-筋コヒーレンス(CMC)」と呼ばれる生理学的指標を駆使してあきらかにすることである.先行研究では,「最大随意収縮の40%以下の低強度収縮時には,収縮強度によるCMCの差異は存在しない」とされてきた(e.g., Brown et al., J Neurophysiol 1998; Mima et al., Clin Neurophysiol 1999; Ushiyama et al., J Appl Physiol 2012).たしかに,ふたつの収縮強度によるCMC比較を1分間の持続的収縮時行った場合には,先行研究通りの結果となった.しかし,ふたつの収縮強度をランダムに繰り返すような断続的課題時には,低い強度の収縮時にCMCが有意に強くなった.こうした収縮強度によるCMCの差異は,異なるふたつの収縮強度で同様の実験をおこなった場合も観察されたが,ふたつの収縮強度のランダマイゼーションをなくした場合や初期の力の立ち上げを緩やかにした場合などには消失した.以上より,運動皮質による筋活動制御の戦略は,収縮強度というひとつのパラメーターによって一義的に決まるものではなく,どのような収縮を/どのようなスピードで/どのような順序で行うか,といった多様のパラメーターの兼ね合いに応じて変調するものであることが明らかになった.これらの成果により,公募調書に設定した「(研究1)収縮強度のコントラストがもたらす影響」のすべてと,「(研究2)初期運動誤差の有無による影響」「(研究4)課題のランダマイゼーションがもたらす影響」の一部の課題を達成することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍初年度に計画どおりに研究を進めることは非常に困難であった.本来であれば,もう少し探索的な予備検討を十分に重ねるところから1年目の研究をスタートさせたかったが,研究施設の利用制限もあったことから,着実に成果を積み上げられるところから堅実にデータ収集を重ねていった.実験数こそ限られたものとなったが,その分成果の最大化を意識して研究を進めた結果,上記の「研究実績の概要」に記した内容を中心に据えた一編の学術論文を2021年に国際学術誌に発表することができた(Suzuki & Ushiyama, Cerebral Cortex Communications 2021).上述のとおり実験をできる時間数に制限があったため,探索的な活動のための一部資金を次年度に繰り越すこととなったが,成果そのものは当初の計画以上に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の先行きが依然として見えない状況下ではあるが,2021年度はとくに公募調書に記載の「(研究3)視覚フィードバックの差異がもたらす影響」の課題に対して,重厚な予備的検討を重ねながら進めていきたい.とくにこの課題においては被験者にかえす視覚フィードバックにどのようなトリックを仕掛けるかによって,被験者が無意識的におこなっている視覚運動制御を抽出することが可能になると思われる.2020年度の成果をもとに課題設定に対する検討を十分に積み上げることで,本実験のプロトコルを確定していきたい.また,研究代表者がこれまでに行ってきた研究では,基本的には一次運動野近傍の脳波に限局して議論を進めてきたが,(研究3)の実施にあたっては視覚領域の脳波に着目することも非常に大切なことと推察する.全頭脳波計測も視野にいれながら,より重厚な研究を推進していきたい.
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Research Products
(1 results)