2023 Fiscal Year Annual Research Report
Development of hIgh-fidelity Mechanical simulator of the human trunk with internal organs
Project/Area Number |
20H04198
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
山田 貴博 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (40240022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
槙山 和秀 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (40347307)
松井 和己 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (00377110)
山本 剛大 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (00802860)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生体力学 / 人体幹 / 数値シミュレーション / 内蔵組織 / メタモデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,コンピュータによって支援された安全かつ高度な外科手術(Computer Aided Surgery)に資する技術として,内視鏡下・ロボット補助下の手術における患者個別シミュレーション・ナビゲーションシステムの基盤となる臨床応用可能な高精度かつ高速な骨格系を含めた体幹内組織全体の力学モデルの構築とそのシミュレーション技術の開発である. 令和5年度は,骨格系を含む体幹の幾何学モデルの生成手法の開発に取り組んだ.令和4年度から自動車衝突シミュレーションのために開発された人体の力学モデルであるTHUMSの利用について検討を開始し,令和5年度はこれを臓器配置等の位相情報を参照するための標準モデルとして利用することを検討した.このなかで,医用画像には現れない膜組織をTHUMSの臓器モデルとの接触解析により幾何モデルとして生成する技術の検討を行い,従来は検討されていなかった実際に近い複雑形状を有する臓器モデルに膜を配置する場合の課題を確認した. また,令和5年度は,体幹全体の力学モデルの高精度なシミュレーション結果を高速に得る方法として,対象領域の詳細モデルを直接計算するための高速な有限要素解析手法の開発を行った.令和3年度から検討を行っている圧力安定化1次4面体要素に対して,高速かつロバストな計算を実現するため,動的陽解法を適用することを検討した.動的陽解法では,波動伝播速度により時間刻みが決定されるが,生体材料で現れる微圧縮性ではこれを大きな剛性をを持つ体積変形に対する伝播速度で決めることが必要である.一方,このような問題における支配的な挙動は等容変形であり,結果として過小な時間刻みを使うこととなる.そこで,体積変形に対しては陰解法,等容変形に対しては陽解法となる新しい時間積分法を開発し,その有効性を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では,1.骨格系を考慮した高精度な体幹の力学モデルの作成手法,2.機械学習を用いた体幹全体の力学モデルに対するメタモデリング技術,3.力学モデルの妥当性確認のための非侵襲な体幹の力学応答の計測技術の3つの技術的課題を設定し,研究を進めている. 課題1に関しては,自動車衝突シミュレーション用人体モデルTHUMSを人体幹の標準的な幾何学的モデルに適用する手法の検討を行った.THUMSは骨格系を含む有限要素モデルであることから,患者固有モデルとして詳細な解析を行う対象領域以外を簡便に扱うものとして有用であると考えられる.しかしながら,THUMSは動的陽解法による過渡応答解析を想定したモデルであることから,単純なデータ形式の変換だけでは本研究課題で開発する標準モデルとして利用することは困難であることが明らかとなった.したがって,患者固有モデルと標準モデルを組み合わせたモデル化手法の開発の進捗については当初計画からは遅れていると認識している. 課題2に対しては,機械学習を用いたメタモデリングの基礎的な技術の開発をはりモデルを用いて行ったが,3次元連続体への適用についての十分に検討が進んでいるとは言えない.したがって,この技術課題については当初計画から遅れつつあると認識している. 課題3については,平成2年度までの研究課題の成果を引き継ぎ研究を進めて,摘出後臓器の物性計測についての装置は完成し,当初の到達目標である実際の臓器に対する実験の準備が完了した状態であると考える.一方,人体幹全体に対する計測技術については,予備的な検討にとどまっており,当初予定よりやや遅れている. 以上から,本研究課題全体に対する総合的な進捗の評価としては,やや遅れていると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的である高精度かつ高速な骨格系を含めた体幹内組織全体の力学モデルの構築とそのシミュレーション技術の開発に向けて,進捗状況で示した3つの研究課題に対して令和6年度の推進方策を考える. 課題1については,膜組織の力学的モデル化手法および臓器等との接触を考慮するロバストな計算手法が必須であり,直交格子を用いた膜の計算モデルとレベルセット関数と新しい接触解析の開発を推進する.また,並行して,幾何学モデルの生成についての研究を推進し,医療画像から膜組織を含むモデルの生成を目指す. 課題2については,THUMSをモデルが想定する自動車衝突シミュレーションと同様な計算環境・条件を用いて学習用データを生成し,機械学習を用いたメタモデリング技術を構築する手法の開発を進める. 課題3については,令和5年度までに開発した摘出直後の腎臓に対して実際に材料物性同定実験を実施し,力学的パラメータを取得する.ロードセルを内蔵したプローブにより腹部のさまざまな点をさまざまな方向から圧迫し,その応答を超音波診断装置により撮影するとともに,腹部の外形の変位を光学式3Dスキャナで計測する手法を開発する.これにより,非侵襲で詳細な内臓を含む組織の力学応答を取得することが可能となり,得られたデータを用いて力学シミュレーションに基づく逆解析を行うことにより,基礎的な物性値を取得することを目指す.
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