2021 Fiscal Year Annual Research Report
自己の諸側面から見るロシア・ユダヤ人の民族間関係:パレスチナ紛争に至る前史として
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20H04418
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鶴見 太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00735623)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シオニズム / ロシア帝国 / ユダヤ人 / ポグロム / パレスチナ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に参加することができなかった3つの国際学会に参加し、ロシア革命前後に発生したものを中心としたポグロムに関する記憶と1920年代のパレスチナにおける暴力との関係を探る研究成果を報告し、様々な意見を受けることができた。 参加したのは、Association for Israel Studiesの年次大会(6月)、リトアニア・ヴィルニュス大学で開催された(COVIDにより延期されていた)マイクロヒストリーに関するワークショップ(7月)、そして、北米スラヴ学会(ASEEES)の年次大会(11月)である。 「西」としての側面を内面化するシオニストらは、旧ロシア帝国領においてもパレスチナにおいても、暴力を「東」に特有のものと捉えた。ロシアにおいては確かにいわれなき暴力にユダヤ人が曝されたのであり、それに対してユダヤ人の側に原因を求めることはできない。しかし、パレスチナおいては、自らの領域と考えるアラブ人にとって、その領域に単に個人的に移住するだけでなく、何かしらの政治的・領土的基盤を設けようとしていたシオニストは脅威に映り、シオニストであるか否か、軍人であるか否かの区別をしなかったとはいえ、その矛先がユダヤ人に向くことは、単に野蛮な人びとの理不尽な暴力として位置付けることができるものではなかったはずだ。ところが、そのように捉えたことの背景には、ポグロムの経験があったのではないか。それは、パレスチナでの暴力の展開の描き方が、ポグロムの描き方に似ていることから示すことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナやロシアによるウクライナ侵略の影響でスケジュールは大きく崩れているが、この年度は、一定程度立て直すことができた。成果は生まれた一方で、戦争に関連して時間を取られたことなどから、はかばかしく進めることができなかったのも事実である。
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Strategy for Future Research Activity |
ある時点での暴力が、続く暴力の認識にどのように影響するかについては、ユダヤ人以外の事例も少しずつ見えてきているので、今後はさらにその点も探りながら、自己のなかにある様々な側面がどのように影響し合うのかという議論の仕方を含めて整理を続けていく。
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