2023 Fiscal Year Annual Research Report
ナノメディスンと超偏極希ガスMRIの融合による超高感度肺癌検出システムの開発
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20H04516
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 敦臣 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (70303972)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 超偏極キセノン / 酸化鉄ナノ粒子 / リポソーム / 肺癌検出システム |
Outline of Annual Research Achievements |
超偏極キセノン(HP 129Xe)MRIが基礎的発展を遂げ、難治性肺疾患の胸部診断に応用が図られているが、肺癌への適用は阻まれている。このような状況に対し、申請者は、癌組織に特異的に集積する酸化鉄ナノ粒子を造影剤として利用した造影HP 129Xe MRIが肺癌イメージングに有効であることを実証することに成功した。一方、一般的にナノ粒子は癌組織への集積を期待して経静脈投与されるが、近年、肺癌に高効率にナノ粒子を送達させるため経気道投与が着目されるようになった。そこで本年度では、酸化鉄ナノ粒子封入リポソーム(IO-Lips)を経気道投与した造影HP 129Xe MRIの特徴を調べるとともに、経静脈投与と比較することによって、投与方法の違いが及ぼす影響を調べることとした。 実験では、雄性ddYマウスに肺癌誘発のためウレタンを腹腔内投与した。ウレタン投与3か月後、マウスを(ⅰ)経気道投与群、(ⅱ) 経静脈投与群に分類し、各群にIO-Lipsを投与し、その後、造影HP 129Xe MRI撮像を経時的に行い、各投与の体内動態に及ぼす影響を比較した。 実験結果において、各群ともに癌部位と一致する局所的な信号強度低下を確認した。経気道投与群では、投与3日後に癌を含むROIの信号強度の有意な低下が確認された。この信号強度の低下は、投与7日後まで継続した。一方、経静脈投与群では、投与3時間後に癌を含むROIの信号強度の有意な低下が確認された。しかし、その後、信号は回復した。以上より、HP129Xe MRIにおいて酸化鉄ナノ粒子封入リポソームは肺癌に集積し造影効果があること、経気道投与と経静脈投与では造影剤の体内動態が異なることを明らかとした。 一方、上述のIO-Lipsを磁気温熱治療に応用すべく、インビトロにおいて交番磁場照射による発熱条件を調べ、目的の温度上昇を観察することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
葉酸修飾酸化鉄ナノ粒子およびポリエチレングリコール被覆酸化鉄ナノ粒子封入リポソーム(IO Lips)を肺癌マウスモデルに投与したところ、本造影剤により超偏極キセノン(HPXe)MRIによる肺癌イメージングが可能であること、および特徴的な体内動態を示すことを明らかとした。特に、IO-Lipsの経気道投与により、肺癌への高効率なデリバリーが可能であること、および癌組織における長時間の保持を明らかとするができた。これらの成果は、HPXe MRIの磁気温熱治療への応用に向けて端緒的な知見となるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題にて、超偏極キセノン(HPXe)MRIとナノメディスンを融合することで他に類を見ないHPXe-MRI による肺癌検出システムと治療効果判定に有効な前臨床評価系を構築することに成功した。この成果に基づき、今後は、当初計画通り新規肺癌診断・治療法の開発に着手する。 酸化鉄ナノ粒子封入リポソームを肺癌マウスモデルに経気道投与し、超偏極Xe MRI画像にて肺癌の所見が現れた時点で、このマウスに交番磁場を照射して磁気温熱治療を施す。治療においては、化学療法との併用も試みる。治療後、治療効果を超偏極Xe MRIにてモニターする。この時、超偏極キセノン肺機能診断を施行し、どの程度早期に治療効果判定が可能か調べる。
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Research Products
(2 results)