2023 Fiscal Year Annual Research Report
A Joint Research on the Concept of Negation or Absence (abhava) in Indian Philosophy
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21H00472
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University of Advanced Science |
Principal Investigator |
丸井 浩 京都先端科学大学, 総合研究所, 特任教授 (30229603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 陽一 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (40616546)
桂 紹隆 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (50097903)
藤井 隆道 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (50783479)
稲見 正浩 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70201936)
加藤 隆宏 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (80637934)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ニヤーヤ学派 / ミーマーンサー学派クマーリラ派 / ミーマーンサー学派プラバーカラ派 / ダルマキールティ学派 / 文法学派 / 非存在認識論 / 二種の否定辞機能 / 無と解脱論 |
Outline of Annual Research Achievements |
古来インドでは「無/否定」に関する哲学的思索が盛んで、ウパニシャッド成立以降、仏教を含む哲学諸学派の発展とともに、存在論・因果論、認識論・論理学、言語哲学・聖典解釈学、および解脱論という4領域と絡みつつ多様に展開した形跡がある。しかし「無」の思想の全体像を視野に収めた総合的研究は皆無に近かった。そこで本研究では、多元論を代表するニヤーヤ、ヴァイシェーシカ学派(丸井、岩﨑)、一元論を代表するヴェーダーンタ哲学(加藤)、否定辞の機能分析に関わる言語哲学(文法学派、ミーマーンサー学派:藤井)及びインド仏教哲学(桂、稲見)の第一線の専門家が、研究協力者10数名(和田、川村など)と共に、上述の4領域のいずれかを軸とした研究に参加し、4年間にわたるテキスト実証的な個別研究と学派横断的・比較思想的な共同研究を通じて、インド哲学における「無」の思想の諸相に関する総合的知見の開拓を目指している。 本年度の研究活動も交付申請書の研究実施計画にほぼ沿って行われた。主な成果は2つ。1つは、日本印度学仏教学会第74回学術大会パネルA「インド哲学における「無」(abhava) をめぐる議論の諸相」である。コメンテーターでもある桂の司会のもとで、丸井は『ニヤーヤ・マンジャリー』の非存在認識論を分析、和田は初期新ニヤーヤ派のシャシャダラの同議論を紹介、稲見はダルマキールティとその後継者たちによるバーッタ・ミーマーンサー派の同議論に対する批判の系譜を考察した。他方、川村は文法学派における2種の否定辞機能という概念を先行研究に照らしつつ明確にした。本パネルの要旨は桂によって発表された。もう1つは年度末、2日半にわたる集中合同研究会を開催し、諸学派の非存在認識論を中心に8人が個人発表を行い、かつ活発な討論がなされた。公表された研究成果をまとめると、論文12件(国際共著4件)、学会発表8件、図書3件であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、インド哲学諸派の思想体系の違いに立脚した4研究班(多元論哲学/一元論哲学/言語哲学・聖典解釈学/仏教哲学)を共同研究の基本単位に据え、そこに4つの思想領域(存在論・因果論/認識論・論理学/言語哲学/解脱論)を絡めてテキスト実証的な個別研究と、学派横断的、比較思想的な共同研究を有機的に組み合わせた5つの研究企画が軸となって展開するプロジェクトである。 本年度は代表者(丸井)が遠隔の京都先端科学大学に所属変更となり、事務補佐員が研究室で定期勤務する雇用形態から、アドホック的補佐業務を業務委託に落とし込んだ謝金支給による共同研究の運営体制に移行した。 学会パネル発表や年度末の集中合同研究会(松江)などで最も活発に共同研究が進展しているのは、非存在の認識をめぐる諸学派の議論(非存在認識論)の解明である(企画1(2)、企画3(2)、企画5(1))。特に本年度は丸井がNyayamanjariの同議論の前半部(ミーマーンサー学派クマーリラ派とニヤーヤ学派との論争)の原典講読研究会をオンラインで4回行い、かつニヤーヤ学派研究班の岩﨑(Udayana)、和田(Sasadhara、Gangesa)の同議論に関する個人研究との組織化を図り、同学派における非存在認識論の展開史が新ニヤーヤ派まで辿れる可能性が浮上した。また非存在の外界実在性を認めないミーマーンサー学派プラバーカラ派(藤井)及び仏教論理学派(稲見、道元)の同議論との比較考察、並びに文法学派の2種の否定機能(全否定と部分否定に相当する)の議論(川村)との関係性の分析を進めることで、無(非存在)の認識の問題は、存在論や言語哲学とも密接に繋がっていることが明白となってきた。他方、無と解脱論・修道論との関係に関する課題、および空思想と無の問題については(企画2と企画4)は、最終年度に開催予定のシンポジウムで議論を深めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究組織】最終の2024年度は新たに川村悠人広島大学准教授を研究分担者に、根本裕史同教授を研究協力者に加える。後述するように、本科研プロジェクトの最終報告の一環として広島大学比較論理学プロジェクト研究センター(センター長根本教授)との共催シンポジウムを開催し、さらにその成果報告書を兼ねた同研究センターの年刊学術誌の特集号を年度内に発刊するために、本科研メンバーと同研究センターとの連携強化を図るためである。その他の運営体制は2023年度と同様。 【共催シンポジウム】2024年9月4- 5日、京都先端科学大学で、広島大学比較論理学プロジェクト研究センターとの共催シンポジウムを開催し、本科研の総合テーマであるインド哲学諸派(仏教を含む)における〈無・否定〉をめぐる諸議論を、比較哲学的視座に照らしつつ討議する。そのための企画運営委員会(丸井、根本、川村)を4月に発足し、6月末までに共催シンポの登壇者と発表テーマを含め全体プログラム確定する。 【研究会】ニヤーヤ学派研究班を中心に非存在認識論のテキスト該当箇所のオンライン講読会を随時開催する。また年度末に集中全体研究会を開催し、4年間の共同研究を総括して、今度の共同研究の見通しを検討する。 【論文集の刊行】広島大学比較論理学プロジェクト研究センターの年刊学術誌『比較論理学研究』の2024年度の特集号「インド哲学における無・否定をめぐる諸議論の探求」(仮題)を、上記の共催シンポジウムの成果報告書ならびに本科研の最終成果報告書として2024年度内に刊行する。そのために上記シンポの企画運営委員会と同じメンバーからなる編集委員会を組織する。 【個別の研究発表】2024年度に開催される関係学会(日本印度学仏教学会、日本宗教学会など)および関係学術誌(『印度学仏教学研究』など)で、研究メンバーは各自、個別研究発表を行う。
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Remarks |
全体研究会(2024.3.4-6)での主な発表:桂紹隆「書評:槻木裕著『疾駆する馬上の龍樹 空という理と思考の理』」;藤井隆道「非存在の認識論:シャーリカナータの議論」;岩﨑陽一「Udayanaの非存在認識論を中心に」;道元大成「非認識因の論証式をめぐる諸問題」;丸井浩「NM非存在認識論中のKum派の議論の思想史的評価」「ガンゲーシャの非存在認識論に対するヴァーチャスパティの影響の可能性」など。
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Research Products
(23 results)
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[Book] インド哲学入門2023
Author(s)
ロイ・W・ペレット 著、加藤 隆宏 訳
Total Pages
392
Publisher
ミネルヴァ書房
ISBN
978-4-623-09615-2
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