2021 Fiscal Year Annual Research Report
チベットにおける観音信仰の受容と変容:『王統明鏡史』と『摩尼十万語』を中心に
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21H00476
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University of Tourism |
Principal Investigator |
佐久間 留理子 大阪観光大学, 観光学部, 教授 (60280658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 富士夫 名古屋女子大学, 家政学部, 教授 (90212042)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 王統明鏡史 / 摩尼十万語 / 六字真言 / チベット仏教 / ソナム・ゲルツェン / 観音 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、次の研究を実施した。『王統明鏡史』第6章および『摩尼十万語』第1巻第1部第27章を、『カーランダ・ヴューハ・スートラ』等に説かれた類話と比較した。また、『摩尼十万語』第1巻第1部第19ー26章所説の観音による六道輪廻世界の救済説話を『カーランダ・ヴューハ・スートラ』等に説かれた救済説話と比較した。なお、これらの研究は、次年度以降においてその成果を公表する予定である。また、『王統明鏡史』における第4章・第5章にみる六字真言の字義・功徳・表象とその宗教的・思想的背景について考察した。その研究成果は、日本宗教学会・第80回学術大会(2021年9月7日)において口頭で発表した。さらに、この口頭発表の内容を大幅に加筆・修正したものを、論文として学術雑誌においても公表した。当該論文では、『王統明鏡史』における『法華経』「普門品」、『無量寿経』、『カーランダ・ヴューハ・スートラ』、『サーダナ・マーラー』、『千手経』の影響を指摘するとともに、それらの文献の諸要素が『王統明鏡史』の中にチベットに適応したかたちで組み込まれていることを論じた。 この他、研究代表者は、当該研究課題に関連する次の研究会を主催した。日時:2022年1月8日16:30ー18:00、招聘講師:佐々木一憲氏(立正大学法華経文化研究所特別所員)、題目:「文殊口決の実践の教え」チベット仏教の源流の一つとしての大波濤行」、参加人数:研究代表者と研究分担者を含む計8名。また、研究代表者は、公表予定の論文に添付する地図(仏教伝播図・チベット宗教地図)を、研究協力者(2名)に依頼し作成させた。 研究分担者は、『王統明鏡史』第17章における仏身論について考察し、研究成果を学術論文において公表した。当該論文では、仏身論における民衆的信仰の影響等が指摘された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ネパール国立公文書館(ネパール・カトマンズ)へ『摩尼十万語』のチベット語写本のコピーを取りに行く予定であった。しかし、コロナ禍の状況においてネパールへの渡航と日本への帰国が難しく、そのため写本のコピーを入手できなかった。また、国内の研究機関(公益財団法人東洋文庫)で資料調査を行ったが、コロナの防止策として、閲覧日は10日以上の間隔をあけなければならず、2日間の調査期間(1回)では十分な調査ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、ネパールへの渡航が容易になれば、写本コピー等の資料を得るため、海外出張を実施する予定である。また、国内の研究機関において十分な調査ができなかった資料についても追加の調査を行いたい。
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Research Products
(5 results)