2021 Fiscal Year Annual Research Report
戦後思想群像の再構築―近代日本の学知におけるアジア認識の変遷を手掛かりに―
Project/Area Number |
21H00479
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
小嶋 茂稔 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (20312720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒川 みどり 静岡大学, 教育学部, 教授 (60283321)
山田 智 静岡大学, 教育学部, 准教授 (90625211)
田澤 晴子 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (40737160)
廣木 尚 早稲田大学, 大学史資料センター, 講師(任期付) (00756356)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アジア主義 / 石母田正 / 竹内好 / 戦後思想 / 戦後歴史学 / 民族 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦前期から戦後にかけての「アジア主義」の言説について、竹内好が編纂した『アジア主義』(現代日本思想体系第9巻、筑摩書房、1963)に収録された諸論考の検討を行った。この検討を通して、特に戦前の「アジア主義」的言説の持つ独自の意義と限界について認識を深めることができた。「アジア主義」的言説と比較した1930年代の中国論についての検討は必ずしも十分に深めることはできなかったが、竹内編纂『アジア主義』にその論考が収録されている尾崎秀実の議論の検討など、今後の手掛かりとなる作業を進めることは出来た。 竹内編纂『アジア主義』の検討を踏まえ、本研究の中核的課題である戦後思想におけるアジア認識・中国認識の変化の影響を明らかにするための研究対象として、竹内編纂『アジア主義』にもその論考が取り上げられている石母田正の作品を批判的に分析することとした。 石母田正の言説は多岐に亘るが、日本の敗戦や1949年の中華人民共和国の成立を受けた様々な変化を正面から受け止めたものとして、1950年代前半に刊行された『歴史と民族の発見』・『続 歴史と民族の発見』に収録された諸論考の分析を進めた。 1950年代のこうした石母田の業績は、国民的歴史学運動を牽引したものとして、一定の批判にさらされてきた側面がある。しかし、改めて精読することを通して、中国革命の成功を高く評価しつつ、単独講和や日米安全保障条約の締結という状況に置かれた中で、いかに真剣に日本の独立なり民族の独自性を堅持しようとしていたか、従来ややもすれば否定的に受け止められていた論点について、石母田論の見直しとしてはもちろん、戦後思想の重要な一側面として位置づけられる可能性を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
戦前の「アジア主義」に関する代表的な論考の検討を踏まえ、戦後思想の一翼を担う歴史学研究者・石母田正の分析に着手することができた。 また、新型コロナウィルス感染症の感染状況が必ずしも好転しない中であったが、遠隔方式による研究会活動を定期的(月に1回)に継続し、感染状況に落ち着きが認められた時期には、東京に参集して対面方式による研究会も開催することが出来ている。 以上のような点から、おおむね順調に進展していると判断したところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の中心的研究活動である、月1回程度の研究会活動を継続して実施することを通して、研究代表者・研究分担者間の意思疎通を密に行って、共同研究の実を挙げていくこととしたい。 2021年度中から石母田正の分析を進めているが、当初の想定以上に、石母田の戦後思想における位置づけを高く評価することが可能になることが見込まれているので、研究の主たる焦点について、研究の実効性をどのように高めるかという観点から、2022年度中に検討を進めることとしたい。
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Research Products
(15 results)