2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H00496
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
石原 友明 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 教授 (60315926)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
建畠 晢 多摩美術大学, その他, 学長 (50125217)
佐藤 知久 京都市立芸術大学, 芸術資源研究センター, 教授 (70388213)
砂山 太一 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 講師 (50750460)
石谷 治寛 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (70411311)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 芸術資源 / ブロックチェーン / デジタル・アーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度にあたる本年は、まず第一に、分散型芸術資源アーカイブの理論に関して、①文献資料とインタビュー調査(施井泰平氏(Startbahn, Inc.代表)他)による先行事例調査、②非公開の研究打ち合わせによる研究会を通じた知見の共有を行った。 その結果、メリットとしては①ブロックチェーン技術を用いたデータベースの設計は、データの真正性や変更履歴を堅固にし、ポスト・トゥルースの時代における情報の確実性を高めることによって、芸術研究者に多くの利点をもたらすのみならず、作品情報や取引の履歴を正確に保持する等、芸術家にとっても多くの利点があると考えられること。その一方でデメリットとして、②あらゆるトランザクション履歴を保存する監視技術に転じる危険性も持つこと、③マイニング処理等に伴うブロックチェーン技術の環境負荷、等の問題も認識された。また諸外国の研究からは、④大規模で中央集権的なデータベースの持続可能性は魅力的であるが、資料選別に伴うバイアスや政策変更に伴う記憶機関への予算削減などによって、現実的には基盤が脆弱であること等が明らかになった。 第二に、アーカイブシステムの実装に関しては、上記の知見をもとに実装に向けた条件の検討に入るとともに、データサーバやソフトウェア等を整備した。 最後に、芸術資源の蓄積については、京都市立芸術大学の移転(2023年度)を前に、教員や卒業生へのインタビュー、キャンパスで撮影された写真や資料の収集等を通じて、沓掛キャンパスに関する記憶の記録活動を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の流行によって、活発な研究活動を行うことが難しくなったことが遅れの主な原因である。 まず、対面での公開研究会を開催することがほぼ不可能になり、限られた人数での研究打ち合わせを行うのみとなった。また、同感染症の世界的流行による行動制限のため、海外調査を延期せざるを得ず、海外の研究者との交流も思うように行うことができず、結果として研究組織外部との交流が、大きく制限される状況に至った。 また、さまざまな芸術資源の蓄積や収集に関しても、対面での接触をともなう調査や収集活動が制限されたことにより、思うように活動を進めることができなかった。 最後に、物品の購入についても、初年度に購入予定であった大容量デジタルデータ記録媒体であるLTOドライブの購入が遅れた。これは、すでに次世代規格であるLTO9の仕様が発表されていたものの、LTO9に対応するテープドライブの発売が2022年度に開始される見込みであることから、購入を延期したものである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以後は、コロナウィルス感染症の動向に対応し、研究体制を立て直しながら研究を継続していく予定である。具体的には、研究会のオンライン開催によって、パンデミックという状況に対応した研究体制を構築するとともに、各研究分担者・協力者による個別の研究発表を行い、分散型芸術資源アーカイブについての理論的考察を深めていく予定である。つぎに分散型アーカイブシステムの設計と実装については、今年度の検討をふまえ、ブロックチェーン技術だけにとらわれずに、自律的・分散的でありながら芸術資源を共有できるシステムの可能性についても検討していく予定である。また、専門的な技術をもちつつ、人文・芸術系の制作活動や研究についても対応可能な研究者の協力を仰ぐことによって、技術的側面についても研究体制を強化する予定である。 最後に芸術資源の蓄積については、対面での接触を伴う資料整理が限定されることも鑑みて、オンラインで写真等の資料を収集することを可能にするウェブサイトを制作する等の対応を行う予定である。
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Research Products
(7 results)