2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a vocabulary test for measuring the use of verb subcategorization frames and understanding the factors that affect the acquisition of this knowledge
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21H00542
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村尾 玲美 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (80454122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊佐地 恒久 岐阜聖徳学園大学, 外国語学部, 教授 (20586482)
石田 知美 日本福祉大学, 全学教育センター, 講師 (30747449)
城野 博志 名古屋学院大学, 経済学部, 講師 (40781539)
種村 俊介 金城学院大学, 文学部, 教授 (70435428)
吉川 りさ 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90782615)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 動詞下位範疇化情報 / 語彙テスト / ラッシュモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
動詞がどのような統語構造を導くかという動詞下位範疇化情報は、文レベルの発話産出に欠かせない知識であり、予測的文処理においても有効な知識である一方、その習得要因や習得状況についての研究は進んでいない。本研究の目的は、①動詞下位範疇化情報の受容的・産出的知識を測るテストを開発し、②習得難易度はどのような要因の影響をうけるのか、③学習者に共通する誤りはどのようなものか、④受容的知識と産出的知識はどのような関係にあるのかを明らかにすることである。 令和3年度は、第一の目的であるテストの開発に着手した。予備調査として、JACET8000のレベル4までの動詞で作成された216のテスト項目のうち一部を使用し、269名の大学生と高校生に対して産出テスト(PTVS)を実施した。この予備調査により、被験者に共通して見られる誤りを見つけ出し、それらを多肢選択式受容テスト(RTVS)の錯乱肢とした。本調査として、4つの大学に所属する104名の大学生に対しPTVSを実施し、1か月以上間隔をあけて同じ参加者にRTVSを課した。ラッシュモデルによる分析をしたところ、PTVSについては被験者の信頼性が.91, 項目の信頼性が.96と高い数値であった。Person-Item Mapからは、-3以下のレベルの被験者に対応する項目が無く、初級者には難しいテストであることが判明した。RTVSは被験者信頼性は.88、項目信頼性は.94であった。Person-Item Mapからは、難易度の高い項目の追加が必要であることが明らかとなった。PTVSとRTVSの被験者相関はr=.88、項目相関はr=.75であった。この調査結果はLanguage Testing Research Colloquium (LTRC) 2022にて発表した。今後216項目すべてについて調査し、モデルに適合する項目を増やす予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロジェクト申請時は、VLTなどの他の語彙サイズテストと同様に、まずは動詞下位範疇化情報の頻度リストを作成し、その頻度リスト元に項目難易度を決定することを想定していた。予備調査としてプロジェクト開始前の令和2年度に、211名の大学生を対象に6段階スケールを用いた容認性判断課題を実施し、容認度を予測する要因を線形混合モデルにより分析した。分析の結果、英語熟達度の高い学習者であれば動詞下位範疇化情報の頻度が容認性判断を予測する一方、熟達度の低い学習者の知識は頻度情報では予測できないことが明らかとなった。また、動詞の頻度は下位範疇化情報の知識とは無関係であることが分かった。つまり、学習者はsayのような高頻度の動詞であっても、その使い方を十分には理解していないとうことである。この結果は令和3年3月にJ-SLAにて発表した。
頻度リストが難易度を適切に予測しないことが明らかになったため、プロジェクト開始後は項目応答理論を用いて項目難易度リストを作成する方針に転換した。方針転換に伴い、項目応答理論に詳しい研究者からの助言を事前にもらうことにし、8月に関西大学の水本篤教授、清泉女子大学の小泉利恵准教授、弘前大学の佐藤剛准教授をお迎えして、4時間半に渡るオンライン勉強会を開催した。語彙リスト作成法の方針転換に関しては、ちょうどSchmitt et al. (2021)にFrequency-based vocabulary listsからKnowledge-based vocabulary listsへの変更という内容で論文化されていることをご紹介いただいた。本プロジェクトはプロジェクト開始前から予備調査を行っていたため、方針転換があったもののプロジェクトの1年目から変更することができ、進捗に遅れが生ずるのを避けられた。9月以降は新たにデータを収集し、ラッシュモデルで項目難易度を分析した。
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Strategy for Future Research Activity |
プロジェクト2年目は、Productive Test of Verb Subcategorization (PTVS)とReceptive Test of Verb Subcategorization (RTVS)作成の為のデータ収集を引き続き行い、ラッシュモデルで項目難易度の分析を行ってテスト項目のアイテムバンクを充実させる。具体的には、先にPTVSを実施し、多くの学習者に見られる誤用を拾い上げ、それらをRTVSの錯乱肢としてテストを実施する。3年目の前期までにはミスフィット項目を修正したテストを完成させる予定である。被験者のレベルに広く対応できるだけのテスト項目がそろった時点で、コンピュータ適応型テストの作成を試みる。 プロジェクト3年目は三つの班に分かれ、研究課題の2、3,4に着手する。研究課題2では、項目難易度に寄与する要因を分析する。下位範疇化情報の頻度や代表性、構造の複雑さといった項目特性を予測要因とした分析を行うことによって、第二言語習得の理論的な説明を試みる。研究課題3はPTVSの誤用を記述し、個々の動詞をどのように間違える傾向があるかという情報を提供する。研究課題4は、PTVSとRTVSの項目難易度の違いについて分析する。 PTVSとRTVSが完成した時点で、外国語教育メディア学会全国大会の公募シンポジウムに応募し、成果と今後の展望を発表する予定である。
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Research Products
(1 results)