2022 Fiscal Year Annual Research Report
時空間情報科学を活用した日本古代地域社会のレジリエンス分析
Project/Area Number |
21H00568
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
今津 勝紀 岡山大学, 文明動態学研究所, 教授 (20269971)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺村 裕史 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 准教授 (10455230)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | レジリエンス / 地域社会 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、吉備中枢平野部をフィールドに、地理情報システムを利用して灌漑や開発、集落の形成など生存・生活の空間を復元するとともに、②饉や疫病などの環境抵抗が地域社会に及ぼす被害をシミュレーションし、これらの時系列変化から地域的な人口動態を明らかにする。この作業を通じて、当時の社会システムがどのように機能していたかの見通しをえたいと考えている。 本年度は、昨年度に引き続き、当該地域における古墳時代中期以降の集落遺跡をはじめとする考古学的データを集成し、5世紀から7世紀の人口動態基礎資料とし、空間分析を行った。②古代については、郷(五〇戸)の分布から人口動態を考えるのだが、郷は五〇戸で構成されるため、郷が編成されたであろう範囲を代替する座標を選定し、ボロノイ分割により、擬似的に郷の領域を復元した。分割した領域の面積が相対的人口密度を反映するので、吉備中枢平野部の相対的人口密度についての見通しをえた。 サブフィールドの調査は十分に行えなかったが、初年度の計画分については地域社会の研究者を招いての研究会を実施することで補充した。なお環境抵抗の最大のものは飢饉と疫病であるので、地域社会へのインパクトを半布里戸籍の推定死亡率をもとにシミュレートした。成果は今津勝紀『日本古代の環境と社会』(塙書房、2022.12(単著)380pp. ISBN 978-4-8273-1337-6)にて公表した。高精細古気候データとの対照については、次年度以降に実施する予定。主フィールドについての近世絵図史料は確認済み。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、①地理情報システムを利用して灌漑や開発、集落の形成など生存・生活の空間を復元するとともに、②飢饉や疫病などの環境抵抗が地域社会に及ぼす被害をシミュレーションし、これらの時系列変化から地域的な人口動態を明らかにすることを目的とする。これらの作業を通じて、当時の社会システムがどのように機能していたか考えるのだが、まず以下のような事実があきらかとなった。本研究の主たるフィールドである吉備中枢平野部では、古墳時代後期に遺跡数が増加すること、その背景には渡来人を交えた水利の開発などがあること、これらを受けて古代では有数の人口集中地となることが確認された。 第6回古代地域社会史研究会を開催し、平安初期の地域社会と貧窮者、諸国書生の存在形態と苑は悪、古代日本における飢饉・勧農・村落などのテーマでの報告をえた。
|
Strategy for Future Research Activity |
地域社会の人口動態に影響を及ぼす環境抵抗である疫病・風水害・洪水・地震の被害については、次年度以降にシミュレーションを具体化する。サブフィールドとして想定する隠岐国(郷の分布確認)・山背国愛宕郡(洪水痕跡の確認)、豊後国速見郡(洪水痕跡の確認)の現地調査を行う予定である。 また、吉備中枢域における人口動態については屯倉の開発が関連していたと考えられ、吉備の屯倉については列島社会に果たした当該地域の政治的役割を考慮する必要がある。そのため渡来人の主たる出身地であるカヤ地域との関連などについても検討する予定。
|
Research Products
(3 results)