2022 Fiscal Year Annual Research Report
13-15世紀の対イスラーム宣教に見るキリスト教的世界観の変容
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21H00586
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
阿部 俊大 同志社大学, 文学部, 教授 (60635788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 舞子 東京大学, 東洋文化研究所, 特別研究員 (00834623)
藤崎 衛 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50503869)
黒田 祐我 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (50581823)
篠田 知暁 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (50816080)
梶原 洋一 京都産業大学, 文化学部, 准教授 (50844552)
柳橋 博之 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (70220192)
佐藤 健太郎 北海道大学, 文学研究院, 教授 (80434372)
高橋 謙公 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (50961596)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ハディース / ファトワー / ドミニコ会 / 捕虜 / 奴隷 / 教皇庁 / 海域秩序 / アラゴン連合王国 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究分担者である柳橋博之は、2022年11月に「ハディースの集積と伝播から見た伝承家という集団」という題目の研究報告を行った。また『イスラームの内と外から―鎌田繁先生古稀記念論文集』に論文「解放選択権をめぐるハディースと法学説の展開についての一考察」を寄稿し、2023年3月に刊行された。2023年6月にはイギリスの出版社からハディースに関する単著の刊行を予定しており、昨年度、ハディースに関する研究で多くの成果を挙げている。同じく佐藤健太郎は、岩波講座世界歴史8巻に「アンダルスの形成」という論文を寄稿している。また、篠田知暁は国際的な学術雑誌であるHesperis-Tamuda誌にマリーン朝における法学テクストの分析成果を論文として寄稿している。この他、篠田は15-16世紀のモロッコについて、知識人ネットワークやファトワー研究などで3回の研究報告を行っている。西洋史の分担研究者では、梶原洋一がフランス語でフランスのドミニコ会の教育システムについての単著を刊行した。また、藤崎衛は教皇庁とモンゴルの関係について、国際論文集に論文を寄稿し、かつ国内学会・国際学会で1度ずつ研究報告を行っている。また、黒田祐我は岩波講座世界歴史9巻に論稿「レコンキスタの実像」を寄稿し、また学術雑誌に中近世地中海の捕虜や奴隷を扱った論文を掲載している。高橋謙公は、リーズ大学で開催された国際中世史研究集会と京都大学西洋史読書会において、シチリア王国の海域秩序に関する報告を行っている。このように、イスラーム史・西洋史の双方で、分担研究者たちは、それぞれの専門領域で科研の内容と関わる多くの成果を残している。研究代表者は、翻訳書として『アラゴン連合王国の歴史』を刊行し、研究主題の時代的・地理的な背景を明らかにした他、教皇庁の活動を中心として研究会や研究合宿を組織・開催し、全体の研究状況を統括した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
柳橋博之は、上記のハディース研究の成果を踏まえつつ、科研の研究会ではイスラーム世界におけるムデハルに対する法的見解について報告した。また、佐藤健太郎は後ウマイヤ朝からムワッヒド朝期にかけてのアンダルスにおけるモサラベの状況について報告した。篠田知暁はイスラーム圏、特に地中海西部における捕虜や奴隷の扱いについて報告している。西洋史側では、高橋謙公は中世後期のシチリア王国とマグリブの交易について報告し、黒田祐我はアルフォンソ10世の治世から13世紀を通じた、カスティーリャにおける異教徒統治について報告した。藤崎衛は教皇庁の宣教活動における外国語学習の状況について報告し、梶原洋一は15世紀の托鉢修道会士ビセン・ファレーの異教徒に対する態度について報告した。このように、分担研究者はそれぞれ、自分に割り振られた課題について期待通りの成果を上げてくれている。また、並行してマグリブにおける教皇庁の活動についての勉強会を行い、科研の参加者全員が、中世後期のキリスト教側の宣教や、またマグリブの状況について大いに知識を深めることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間の活動で、科研参加者全員が知識面で共通する基盤を築くことが出来、また科研に関連するテーマで、それぞれ成果を上げ始めている。3年目である今年は、それぞれの参加者がより具体的なテーマに取り組み、研究報告・研究論文執筆を行えるレベルの成果を上げることを目指す。研究代表者は、ドミニコ会総長であるラモン・ダ・パニャフォルトを中心に、13世紀を通じたアラゴン連合王国の教会人の、対異教徒言説の変容を分析する。黒田祐我は13世紀から14世紀初頭のカスティーリャ王国について、また藤崎衛は同じ時期の教皇庁について同様の作業を行う。梶原洋一はそれに続く時代、14世紀後半から15世紀にかけて、ビセン・ファレーを中心にキリスト教圏における同様の言説や活動の分析を試みる。また、その他の研究分担者は、それらのキリスト教側の宗教的な言説や活動の背景となる様々な状況について解明を進める。佐藤健太郎は、ムワッヒド朝におけるキリスト教徒傭兵の状況を切り口に、イスラーム側のキリスト教圏への眼差しを分析する。篠田知暁は、15-16世紀のポルトガル・モロッコ間の捕虜と奴隷の扱いについての具体的事例を扱う。高橋謙公はマグリブ・イタリア・イベリアの交易関係について研究を進める。野口舞子はムラービト・ムワッヒド両朝における、モサラベを含むキリスト教徒たちに対するファトワーについて、辻明日香は東方キリスト教徒のカトリック教徒に対する眼差しについて、研究を進める。それらの研究成果は、年度内に何度か開催される研究会で確認していく。また、最終年度である来年度(4年目)には、成果を学会報告や学術雑誌への投稿の形で公表していく予定である。
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Research Products
(17 results)