2021 Fiscal Year Annual Research Report
Establishing a chronology of the New Kingdom Memphite Necropolis and its comparison to Thebes
Project/Area Number |
21H00597
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Higashi Nippon International University |
Principal Investigator |
吉村 作治 東日本国際大学, 経済経営学部, 総長 (80201052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢澤 健 東日本国際大学, エジプト考古学研究所, 客員教授 (10454191)
高橋 寿光 東日本国際大学, エジプト考古学研究所, 客員教授 (30506332)
柏木 裕之 東日本国際大学, エジプト考古学研究所, 客員教授 (60277762)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 古代エジプト / 新王国時代 / メンフィス・ネクロポリス / ポスト・アマルナ / 考古編年 / ダハシュール北遺跡 / 墓 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、欠落していた新王国時代のメンフィス地域の考古編年を構築し、テーベ地域との比較を通して両者の異同を明らかにし、その違いを生み出した原因を探ることである。 メンフィス地域の考古編年の構築では、新王国時代を通じて使用されたダハシュール北遺跡の資料を対象にして実施される。計画の初年度にあたる2021年度には約1ヶ月半に渡ってダハシュール北遺跡の発掘調査および出土資料の整理作業が遂行された。遺跡エリア中央部の北側に調査区を設定し発掘を実施した結果、中王国時代と新王国時代の竪坑墓が複数発見された。この内新王国時代の墓と判断された墓は1基(シャフトNo.167)であった。 竪坑の平面は一般的に長方形を呈し、新王国時代にはその長軸が南北のものと東西のものがあり、後者に比べ前者の方がこの遺跡では古い段階の埋葬に用いられていたことがこれまでの調査から知られていた。今期発掘されたシャフト167はこの長軸を南北に持つ墓であり、深さ7.8mの竪坑の底から北と南の両方に埋葬室が掘削されていた。同墓は盗掘を受けており副葬品の多くはすでに持ち去られていたと考えられるが、ポスト・アマルナ期に年代づけられる土器やビーズ、指輪、イヤリング、人型木棺の目の象嵌や断片などが残存していた。当該期の墓の副葬品組成を検討する上で有益な発見と言える。 過去の調査で発見された土器の資料化と分析も並行して進められている。分析の結果は今後の考古編年構築の軸となる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ・ウイルスの影響によって過去の2年間発掘調査ができない状態だったが、収束の兆しが見られたため、初年度に研究計画の通りに発掘調査が遂行され、新王国時代における墓地資料からの考古編年構築に有益な資料が得られた。 計画していた出土人骨の形質人類学的分析や、出土遺物のX線分析は、これらを実施する予定の研究者が海外への渡航を許されていないケースもあるため2021年度は見送られた。しかし、今回発掘調査を実施したことで現地の状況が鮮明となり、これらの分析が問題なく実施可能であることを確認できた意義は大きい。 また、過去のダハシュール北遺跡調査の報告書作成が進められており、2021年度にインターネット上で各項目について順次公開されている。これらの成果によって墓地資料からの考古編年構築の基礎となる情報が整理され、編年の骨格の一部となっていくことは間違いない。
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Strategy for Future Research Activity |
計画では2021から2023年度にメンフィス地域の新王国時代の墓地考古編年構築を進める予定であり、2022年度も継続して土器を中心に墓から出土した副葬品の種別ごとの編年、および墓の編年研究を進める。 2022年度はダハシュール北遺跡でこれまでに調査されていなかったエリアでの発掘を実施する予定であり、そのための準備(当該エリアにおける現代の構造物の撤去・移動など)を2021年度に完了している。調査エリアによって時期や被葬者の社会階層が異なることがこれまでに指摘されており、新エリアでの発掘を通して本遺跡の新しい側面の解明につながることが期待される。 2023年度には墓での共伴関係を利用して各遺物の編年を整合し、副葬品アセンブリッジの変遷過程について一定の見解を可能であれば提出する。2024年度はその成果とテーベ地域における物質文化の通時的変遷に関する既往研究と対応させ、その異同の原因について考察する予定である。
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