2022 Fiscal Year Annual Research Report
Establishing a chronology of the New Kingdom Memphite Necropolis and its comparison to Thebes
Project/Area Number |
21H00597
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Higashi Nippon International University |
Principal Investigator |
吉村 作治 東日本国際大学, 経済経営学部, 総長 (80201052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢澤 健 東日本国際大学, エジプト考古学研究所, 客員教授 (10454191)
高橋 寿光 金沢大学, 新学術創生研究機構, 研究協力員 (30506332)
柏木 裕之 東日本国際大学, エジプト考古学研究所, 客員教授 (60277762)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 古代エジプト / 新王国時代 / メンフィス・ネクロポリス / 考古編年 / ダハシュール北遺跡 / 墓 / アンフォラ / テーベ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、欠落していた新王国時代のメンフィス地域の墓地出土資料による考古編年を構築し、テーベ地域との比較を通して両者の異同を明らかにし、その違いを生み出した原因を探ることである。 メンフィス地域の考古編年の構築では、新王国時代を通じて使用された墓地ダハシュール北遺跡の資料を対象にして実施される。計画の2年目にあたる2022年度には、アンフォラを中心とした土器編年の構築、墓の遺構のタイプ分類とその通時的変遷の分析、木棺、シャブティの編年に向けた資料整理が実施された。アンフォラの編年については、2022年度の日本オリエント学会で研究分担者によって発表が行われた。 また、ダハシュール北遺跡の発掘調査および出土資料の整理作業が遂行された。予定通り、本遺跡で最初に発見されたポスト・アマルナ期の神殿型貴族墓の北側に南北10m、東西20mの調査区が設定され、発掘調査が実施された結果、7基の竪穴墓が発見された。この内5基が発掘され、本研究テーマに関連する新王国時代の墓は3基あることが判明した。特筆すべき成果は185号墓で、盗掘で多くの副葬品は失われていたものの、地下2階の構成の墓内からはアメンへテプ2世からアマルナ時代にかけて類例のある土器群が出土しており、さらにアメンへテプ3世の即位名が入ったファイアンス製の指輪が出土した。本遺跡の新王国時代に年代づけられる墓としては最初期に属することが判明し、王名による年代の裏付けもあることから、現在準備されている考古編年の構築に有用な資料と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では3年間でダハシュール北遺跡の資料による考古編年を構築する予定であり、その2年目に土器、特にアンフォラの編年が提出された意義は大きい。これを軸にして、墓内での共伴関係を基に、木棺、シャブティや墓そのものの形状・構成の通時的変遷を追っていくことが可能となる。墓の遺構のタイプ分類もこの年度に進められ、出土した土器から年代を与えていった結果、各時期の特徴やその変化について、一定の知見が得られた。木棺、シャブティなど、今後の編年研究でコアとなる遺物のデータ整理も着実に進められいる。 埋葬人骨の形質人類学的研究については担当者との調整がつかず、実施できなかった。また、副葬品のX線分析については分析機器がエジプトの税関を通過できないなどのハプニングがあったが、今後の調査で遅延を解消できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画では2021から2023年度にメンフィス地域における新王国時代の墓地考古編年の構築を進める予定であり、2023年はその最終年度として、ダハシュール北遺跡における時代ごとの墓の遺構と遺物の構成を提示することを目指す。土器はアンフォラについては既に編年が確立しており、今後はそれと共伴する他の器形の構成を見ていく。遺構のタイプ分類とその通時的変遷の分析に関する成果は、2023年度の日本西アジア考古学会大会での発表が予定されている。さらに、土器、遺構、木棺、シャブティなど墓地編年のコアとなる項目の研究成果について、2023年度に査読誌への投稿を試みる。2024年度はその成果とテーベ地域における物質文化の通時的変遷に関する既往研究と対応させ、その異同の原因について考察する予定である。
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