2021 Fiscal Year Annual Research Report
出土陶磁器と交易関連文書に基づく前近代日本=カンボジア間交易・交流史の復元研究
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21H00601
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田畑 幸嗣 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60513546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 香子 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (30565635)
佐藤 由似 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 主任専門職 (70789734)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ポスト・アンコール時代 / アンコール時代 / 刻文資料 / クメール陶器 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症の流行拡大にともない、当初の予定を変更した。現地調査は22年度へ繰り越すこととし、21年度は研究会と文献調査を優先させた。ポスト・アンコール時代研究会を新たに立ち上げ、21年度は全6回の研究会を実施し、問題のあぶり出しとこれまでの予備的な研究の成果から、前近代における日本・カンボジア間の関係性を追求する基礎資料を整理した。研究会の報告内容は以下の通りである。 第1回:2021年5月7日(金) 1. 田畑幸嗣(早稲田大学) 「研究会の趣旨説明」 2. 北川香子(学習院女子大学) 「スレイ・サントーの王たち」、第2回:2021年6月12日(土)佐藤由似(奈良文化財研究所) 「ポスト・アンコール期王都の調査」、第3回:7月24日(土) 北川香子(学習院女子大学)「17世紀クメール語書簡の解読」、第4回 日時:2021年10月23日(土) 16:00~18:00 オンライン(zoom) 佐藤由似(奈良文化財研究所)「ポスト・アンコール期王都の調査」、第5回:2022年1月16日(日) 松浦 史明 (上智大学) 「アンコール朝の末期、ジャヤヴァルマン七世以後の刻文史料について」、第6回:2022年2月20日(日) 久保 真紀子 (立正大学) 「アンコール期クメール美術の仏教説話図をめぐる諸課題」。 こうした研究会を通じ、当初予定していた陶磁器関連の現地調査だけでなく、これまで実態の不明瞭であったアンコール時代後期からポスト・アンコール時代の遺跡調査によってカンボジア前近代における社会・宗教・経済システムの変容を明らかにする必要があることが判明した。そのため、22年度以降には新たにバイヨン寺院の調査も実施することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行拡大にともない、現地調査を延期せざるをえなかったが、文献調査やこれまでの予備調査でえられたデータ解析と研究会を集中的に実施することができたため、研究プロジェクトの進捗をトータルで判断すれば、順調に進展したといえるだろう。 特に、カンボジア産陶器の生産=流通=消費システムについてはある程度のモデルを構築することができただけでなく、これまでの定説を覆す、ポスト・アンコール時代における生産と流通の可能性を指摘することができたのは大きな成果といえよう。また、ポスト・アンコール時代の窯業を理解するためには、これまで未着手の分野であった、コール時代後期からポスト・アンコール時代への移行期の調査研究を集中的に実施する必要があることも判明した。日本=カンボジア間書簡については、北川によって解読できるものについてはほぼ全ての調査を終了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究会の議論を通じ、当初予定していた陶磁器関連の現地調査だけでなく、これまで実態の不明瞭であったアンコール時代後期からポスト・アンコール時代の遺跡調査によってカンボジア前近代における社会・宗教・経済システムの変容を明らかにする必要があることが判明した。そのため、22年度以降には新たにバイヨン寺院の調査も実施することとした。また、バイヨン寺院の調査には美術史の専門家の協力が不可欠なため、あらたに分担者を増員することとした。 日本=カンボジア間書簡については、ほぼ調査が終了したため、次年度以降の調査はおもにカンボジア近世碑文の読解調査を推進する事とする。さらに、当該期の漢籍史料についても調査を実施することとした。
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