2021 Fiscal Year Annual Research Report
A study on adaptation strategy of the earliest modern human in the Japanese Archipelago
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21H00608
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森先 一貴 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (90549700)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
國木田 大 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (00549561)
出穂 雅実 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (20552061)
岩瀬 彬 東京都立大学, 人文科学研究科, 助教 (70589829)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 現生人類 / 後期旧石器時代前葉 / 日本列島 / 環境適応 / 高精度編年 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本列島における現生人類到来直後の後期旧石器時代前葉(約3.9~3.0万年前)の地域性形成プロセスを高精度に復元することである。当該時期の遺跡のうち、東北・関東・九州について、(1)放射性炭素年代測定と地学研究の組み合わせにより地質・考古編年の信頼性向上を図り、高精度の編年に基づいて各石器群に、(2)石器技術及び居住形態、(3)道具使用行動(使用痕分析)の観点から多面的な分析を加えることを方法とする。 2021年度は、COVID-19による行動制限の影響により、放射性炭素年代測定の一部を2022年度繰越により対応することとなったが、これ以外については研究プロジェクトチームで適宜対面・オンラインミーティングを行いつつ柔軟に対応することとして、下記のように諸作業を進めた。 研究期間当初に、対象遺跡に関するデータベース化を進めたのち、(1)については、次年度に予定する岩手県奥州市上萩森遺跡の発掘調査について、昭和調査区の調査資料に基づく遺跡残存状況の現地確認及び調査範囲の決定、地元文化財保護部局及び地権者との合意形成、行政手続き等の各種事前準備を行うとともに、上萩森遺跡昭和調査区出土の石器について現地観察と予備的技術分析を行った。また、既存の後期旧石器時代前葉遺跡の地質・考古編年の精度向上研究については、東京都武蔵台遺跡(武蔵台西遺跡、医療センター地点)の石器技術分析・使用痕分析と炭化物サンプル保管状況の確認、鹿児島県中種子町立切遺跡の石斧使用痕調査、鹿児島県南種子町横峯C遺跡の石器技術分析と炭化物サンプリングを実施した。また遺跡現地踏査を踏まえた年代決定手法の検討を実施するなど、(2)(3)にかかる作業も順次進めた。 2022年度に繰り越した作業として、上記炭化物サンプルの放射性炭素年代測定も完遂している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行動制限が求められているなかであったが、実現に困難が予想される作業に変わって次年度の予定作業に前倒しして着手するなど、研究全体の遅延を回避する方策を工夫したことで、おおむね順調な進捗である。 対象遺跡データベースについては予定通り完成しており、また本研究開始前より事前準備を重ねていたため、次年度に予定する発掘調査事前準備を滞りなく実施した。放射性炭素年代測定については、遠方への移動に各種制限があるため調査予定の一部変更があったが、今年度は九州地方において炭化物サンプルの保管とサンプリングまでを行って、年代測定準備作業を整えた。また炭化物サンプリングと同時に遺跡立地・遺跡形成過程の地質学的検討を研究分担者とともに現地で実施することで、効率的な研究の進捗を図った。なお、繰越予算を含めこれらのサンプルの放射性炭素年代測定を2022年度に完遂した。 行動制限を受けて調査予定先を変更し、調査箇所を縮減するなどの対応をしたが、その一方で遠方への移動を伴わない関東圏での使用痕分析を、予定を前倒しして実施するなど研究全体への影響を低減するよう工夫し、次年度の作業に備えた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降の推進方策についても、COVID-19の状況に応じて柔軟に対応する必要があるが、次のように予定する。 本研究の中心課題のひとつである上萩森遺跡の発掘調査は、今年度の準備作業に基づいて4-7月に事務手続き、8月に調査準備、9月に測量調査、10月に試掘調査実施予定である。 昨年度に引き続き、堆積状況・石器群の三次元データが明確な遺跡をデータベース化するとともに、各遺跡の年代決定手法を検証する。そのために石器支持層の地質編年を確認し、遺跡立地と周辺地形地質を現地で分析する。 放射性炭素年代測定については発掘調査時に石器群と同じコンテクストで出土した炭化物を可能な限り数多く収集し、放射性炭素年代を測定して各遺跡の年代決定の信頼性向上を図る作業を継続する。また、当初予定していた東北・関東・九州以外にも、本研究目的に照らして重要な資料が認められた場合には、研究対象に含め研究を効果的に推進する。 予備的に前倒しして着手していた石器の使用痕分析については関東・東北において本格化する。
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