2021 Fiscal Year Annual Research Report
古代官衙における空間構造の変遷と展開に関する実証的研究
Project/Area Number |
21H00609
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
小田 裕樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (70416410)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 考古学 / 官衙 / 宮都 / 建物配置 / 空間構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、古代宮都と地方官衙遺跡の建物配置と空間利用の変化に注目し、これらの空間でおこなわれた政務・儀礼・饗宴などの実態を遺構・遺物の考古学的分析を通じて復元し、空間構造の変遷とその歴史的背景を明らかにすることを目的とする。 本研究では、地方官衙の中枢施設である政庁空間を「律令国家により設けられた地域支配末端機構と古墳時代以来の伝統的秩序を基層とする在地社会の接点」と位置づけ、なぜ古代官衙遺跡では複数の建物配置パターンが存在するのか、そして多くの官衙でみられる「ロの字型」と「コの字型」の建物配置の違いは何を意味し、なぜ建物配置が変化するのかについて、宮都・地方官衙の空間構造の分析により明らかにする。 研究初年度にあたり、研究の基礎データとして古代官衙遺跡の調査事例の集成をおこない、その一部について遺構配置全体図の作成をおこなった。また斎宮跡・肥前国庁・小郡官衙遺跡・上岩田遺跡を対象に遺跡の実地踏査をおこない、報告書および先行研究の建物配置復元案の妥当性を検証した。 研究成果の公表について、平城宮東院地区で検出した厨関連遺構から出土した土器の組成分析をおこない、検出遺構との相関性について分析した成果と畿内の終末期古墳群から出土した副葬土器組成に注目し群集墳の終焉に宮都の動向が影響していたとする論文の2本を公表した。また、平城宮・京や京内寺院から出土する須恵器甕についての分析成果の口頭発表をおこなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
古代官衙遺跡の調査事例の集成と遺構配置全体図の作成について、研究アシスタントを雇用し作業を進める計画であったが、新型コロナウイルス蔓延の影響により、作業計画の見直しを余儀なくされ、その間の作業が滞った。また同様の理由で、遺跡踏査・遺物調査の対象地域を絞らざるを得ず、計画的な事例分析を進めることができなかった。 以上から、当初の研究計画にやや遅れが生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究をふまえ、引き続き事例研究を進める。特に、実地踏査をふまえた発掘調査報告書や先行研究の所見を検証する方法は本研究にとって有効であることを確認できたため、継続的に実施する。 また、今年度作業が滞った調査事例の集成および遺構配置全体図の作成は、作業体制を見直し、より効果的・効率的に実施したい。
|
Research Products
(3 results)