2021 Fiscal Year Annual Research Report
隆起山地の地形発達モデリングと山麓堆積物コアの分析に基づくその検証
Project/Area Number |
21H00628
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松四 雄騎 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90596438)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 浩之 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (60313194)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 宇宙線生成核種 / 地形発達 / ボーリングコア / 削剥速度 / 地理情報システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,近畿地方や中部地方を対象に,地理情報システム上での細密デジタル地形情報の解析により,遷移途上にある山地地形の分析を行い,試料採集の対象流域を定めた.これらの流域で河床堆砂の採取を行うとともに,代表的な斜面において,侵食速度を決定するための岩盤試料を数か所で採取し,石英粒子に含まれる宇宙線生成核種であるBe-10を分析して,流域の削剥速度と地形パラメータとの定量的な対応関係を得た.試料の処理および分析は京都大学および東京大学で行い,加速器質量分析の検出感度向上に関する検討も併せて行った. 土砂の給源となる山地の侵食の結果,山麓に堆積した砂礫中の石英粒子に含まれるBe-10の濃度の時間変遷を説明するため,後背山地の削剥速度変化を計算する地形進化のモデリングを行った.モデルは地理情報システムを用いて構築し,隆起速度の増大に対する応答として斜面の開析領域が拡大すると,山地がより速い速度で削剥され,宇宙線生成核種の含有量が小さい土砂を排出するような過程を定量的に評価できるようにした.シミュレーションの結果,得られているデータとおおむね整合的な出力を得ることができるようにはなったが,現実の地形とモデルとのフィッティング法には課題が残った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展している.地形の発達シミュレーションのパラメータをキャリブレートするための,地形情報と侵食速度情報は着実にデータが収集しつつある.また,地形発達のモデリングも,山体を構成する岩盤の風化と侵食の時空間変化の制御要因に新たな要素を取り入れ,新規性を拡大することができた.一方で,地形発達史を復元するためのボーリングコアや堆積物試料の入手がやや困難であり,この点に検討を要する.また,モデル計算の結果として得られる地形と,現実の地形特性をどのようにフィッティングさせ,シミュレーションの妥当性を担保するか,という点には課題が残っており,次年度以降検討する.
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に対象とした地域での,地形の地理情報システム上での定量解析と,鉱物試料の宇宙線生成核種分析を本年度も継続して行う.特に河道や斜面の急峻度,流域の開析度,あるいは起伏量のような地形パラメータに着目し,山地の地形と流域の削剥速度の対応関係を明らかにして,それらの相互変換が可能になるよう,モデルの高度化を進める.これに基づき,テクトニックな隆起を外部強制力とし,河川の下刻を内部フィードバックシステムの駆動力とする地形の発達過程をシミュレートできるプログラムを構築し実行する. より精緻なパラメータ決定を行うため,引き続き地形の解析と試料の分析対象地の追加探索を行い,必要に応じて現地踏査を行う.河川の下刻や断層の運動に伴う侵食基準面の低下に対する応答としての地形の発達過程が追跡できる場として,北海道南西部および北東部,中部山岳北端から北信・新潟にかけての地域,紀伊半島中北部,四国西部の高縄半島や宇和地域などを追加検討する.さらには淡路島・屋久島・石垣島といった,分析に適した岩種で構成され,陸化以降の経過時間や侵食基準面低下の履歴が異なる島嶼も分析対象として検討する.ボーリングコア等を利用した埋没堆積物の分析については,近畿地方や東北地方,中国四国地方での試料入手可能性を探索し,現地・現物確認を行って分析に着手する. 計算機上での地形解析ののち,各地への現地調査を計画して,地形・地質踏査と試料の採取を行う.試料の物理化学処理には京都大学および東京大学の実験室を利用し,必要な機器や試薬等の実験消耗品を購入するとともに,それぞれ技術術補佐員を雇用して実験を進める.分析は東京大学の加速器施設を利用して行う.得られた成果は,順次学会発表や論文投稿などにより公表する.
|