2021 Fiscal Year Annual Research Report
Bounded intelligence in narrow and wider senses in game theoretical studies
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21H00694
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金子 守 筑波大学, システム情報系, 名誉教授 (40114061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 英三 筑波大学, システム情報系, 教授 (40317300)
鈴木 信行 静岡大学, 理学部, 教授 (60216421)
石川 竜一郎 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (80345454)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 理性制約 / 準理性制約 / 効用比較不能 / 直観主義論理 / 冠頭標準形定理 / 公共財ゲーム / 計算機シミュレーション / 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
経済学・ゲーム理論では、主体の選好と理性は行動基準から行動の選択を導き、逆に社会を経験・学習することによって、選好と理性を含めた新しい社会観・行動基準を形成する。我々の理性は限定されており、本来有限的なものである。本研究では各主体の「理性」を真に有限的に捉え、認識の限界を明確に記述する。 金子守はゲーム理論の理性制約や準理性制約自体の研究を行った。これによって、主体の選好(効用)の測定が明確に定式化でき、主体内の選好の比較不能性が導かれる。 鈴木信行は論理的推論における理性制約を代表している直観主義論理と、超越的な古典論理の違いを考察した。古典論理の量化子の特徴である冠頭標準形定理について、超直観主義述語論理の観点から研究し、この定理の記述自体に、構成的側面がありうることが解り、古典論理以外にもこの定理が成立する論理が無限個存在することを証明した。 秋山英三はフリーライダーに対する罰則が可能な公共財ゲームに関し、ゲーム相互作用、適応・学習、罰則のネットワークの構造が協力進化に与える影響を分析した。計算機シミュレーションによって、局所ゲーム・局所罰・全体適応を含む状況が協力行動の進化を強くもたらすとことを示した。また、金融市場における定型化された事実の多くが自己組織化することを研究した。各々の論文を Nature Scientific Reports、Physica Aで出版した。 石川竜一郎は 意思決定主体の財消費における効用評価と議論の場における意思決定主体に発話内容の評価に関する研究を行った。新商品で市場評価が定まっていない財の消費について、消費者が自分の評価を正直にかつ思慮深く申告する指標を提示した。特に先行研究で知られている「ベイジアン自白剤」を応用し、消費者の評価をランダムに割り当てられる評価者とのマッチングメカニズムを導入することで改善を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
経済学・ゲーム理論における、主体の選好と理性に明確な限定性を導入し、その役割と今までの理論と異なる結果が観察・発見されてきている。一つは、金子守著:Expected utility theory with probability grids and preference formation, Economic Theory 70, 723-764 (2020)の主体の選好の比較不能性と理性制約(あるいは準理性制約)という概念の応用が大きな進展を初めている。まず、令和3年度中にセント・ペテルスブルグ(SP)・パラドックスの研究が大きく進み、この意思決定問題に含まれるパラドックスがどこにあるのか、パラドックス自体が何であるのかが明瞭になってきた。これは数学的なパラドックスではない。現在の経済学・ゲーム理論の基礎とみなされている期待効用理論は確率事象を含む状況の意思決定を自然に記述していると評価されている。しかし、それと具体的人間の意思決定行動と比較すると、大きなギャップが観察される。これがパラドックスである。上記論文では、期待効用理論に主体の確率認識の制限を与える。つまり、その制限以下の確率はゼロとみなすのである。この考えをセント・ペテルスブルグ・パラドックスに応用しているのである。 この応用を通して、パラドックス自体を理解し、その解決に向けて研究した。具体的には、SP賭け市場モデルを発展させ、理性制約により人々が市場に参加する可能性があることを証明した。SPパラドックスはこの可能性がないと主張している。それが人々の経験からの判断と大きく食い違うというのが具体的パラドックスである。それゆえ、実は、理性制約がSP市場への参加の理由になる。 巨大地震など、非常に小さい発生確率を持つ現象への応用がこの理論の応用がこれから先の研究課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度のSP・パラドックスの研究においては、確率の認識限界の導入により効用の比較不能性が大きな役割を果たした。「比較不能性」を字句通りとると、「ビュリダンのロバ」に比喩されるように、全く行為選択が可能でなくなる。それは、「ロバの前の同じ距離に同じ大きさの人参があるとき、ロバはどちらを取れば良いかを迷い、結局選択できずに飢え死にしてしまう」という比喩である。人間の場合、選択肢が比較不能である場合でも、社会の中では選択が必要であり、また、強制される場合が多々ある。この状況のなかで確率的に行為選択をすると仮定して、どのような確率になるかを、SP・パラドックスの論文のなかで研究した。これは準理性的な行為選択である。 準理性的行為選択には多くの形が考えられる。確率的な行為選択はそのうちの一つである。次年度の研究計画では、さらに二種類の異なる準理性の行為選択を考察する。そのうちの一つは、同じ行為が続けて選択されて来た場合、そこで選択肢が比較不能である場合、「行動の慣性」に従うという行動仮説を研究する。この問題は、ゲーム理論でのパラドックスである、ムカデゲーム・パラドックスの中で考察する。このパラドックスも限定的理性のもとで準理性制約としての行動基準としての「行動の慣性」の組み合わせで解決できると考えている。 このような準理性的行為選択には仮説の理論的研究の他、シミュレーションを使った研究や、実験研究が大きな役割を果たすと考えられる。そのため、次年度の研究プロジェクトでは金子守が概念的・理論研究を進め、鈴木信行がその論理学的考察をし、秋山英三が計算機シミュレーションを使った研究を行い、石川竜一郎が経済学への応用の研究を行う。コロナも収束しつつあり、定期的な研究会を開催する予定を立てている。
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Research Products
(15 results)