2021 Fiscal Year Annual Research Report
ロボット化(自動化)は、経済活動のあり方を変えてしまうのか?
Project/Area Number |
21H00698
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤原 一平 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (50736874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
代田 豊一郎 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (80783951)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ロボット / 自動化 / タスク / 代替・補完 |
Outline of Annual Research Achievements |
機械学習などの著しい発展を背景に、「ロボットが仕事を奪う」ことに対する懸念が強まっている。しかし、ロボット先進国である日本についての研究は、極めて限られたものにとどまっている。本研究では、「ロボット化は経済活動のあり方を変えてしまうのか?」といった問いに対し、日本ロボット工業会が集計する詳細なロボット・データを用いて、理論的かつ実証的に答えを提示することを目的としている。 2021年度には、研究代表者、研究分担者の共著で、”Robot penetration and task changes”と題するWorking Paperを公表した。本研究では、日本ロボット工業会が作成する「ロボット産業需給動向」と厚生労働省が作成する「賃金構造基本統計調査」を用いて、1980年から2015年の間に、日本において、ロボットの導入が促進されるにつれ、どのようなタスクが増加、ないし、減少したのかを明らかにした。具体的には、Acemoglu and Autor (2011)による5分類タスク指標の日本版と賃金構造基本統計調査を用いて、それぞれの産業別に、どのタスクの労働者が増減しているか、を表す指数を作成した。そして、その指数が、ロボット産業需給動向より求められる産業別ロボット資本に、どのような影響を受けてきたのかを明らかにした。推計の結果をみると、ロボットの普及率が高まると、ルーチン・マニュアル・タスクは減少するが、認知タスクは相対的に増加していた。すなわち、ロボット化は、同じようなタスクを行っている別の職業への移動を促したわけではなく、雇用の失われた職業とは別タイプのタスクを行っている職業を相対的に増加させたことがわかった。 さらに、ロボット工業会、「マニピュレータ、ロボット統計 受注・生産・出荷」を用いて、産業別、用途別に、ロボット投資がどのような時系列的特徴を示してきたかを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度の2021年度より、研究成果をワーキングペーパーとして発行することができた。データの性質の理解も深まり、どの程度まで、細かいデータを用いて、自動化の影響を計測できるかについて理解を深めることができ、よりシャープな影響を計測できる推定モデルを構築することが可能となった。発行したワーキングペーパーの詳細は以下の通り。 ARAI Kosuke & FUJIWARA Ippei & SHIROTA Toyoichiro, 2021. "Robot Penetration and Task Changes," Discussion papers 21093, Research Institute of Economy, Trade and Industry (RIETI). さらに、関連する研究(自動化の結果生じうる市場の寡占の影響を分析したCompetition and the Phillips Curve)を、以下の3つの国際コンファレンスにて報告した(いずれもオンライン):(1)University of Melbourne, in Melbourne, 2021 Australasia Meeting of the Econometric Society、(2)ShanghaiTech University, in Shanghai, 2021 China Meeting of the Econometric Society、(3)University of Copenhagen, in Copenhagen, 021 European Summer Meetings of the Econometric Society;
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Strategy for Future Research Activity |
自動化がこれまでに労働市場、マクロ経済に与えてきた影響を明らかにするために、事業所・企業統計調査及び経済センサス-基礎調査、経済センサス-活動調査を介して、経済産業省企業活動基本調査、工業統計調査、商業統計調査、民間データ(TSR等)と賃金構造基本統計調査、就業構造基本調査をつなげるようなデータベースを整備する。
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