2021 Fiscal Year Annual Research Report
労働市場への国際ショックの影響:国際経済のマクロ視点と個票データのミクロ視点から
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21H00713
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
遠藤 正寛 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (80281872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 敏弘 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (80510255)
風神 佐知子 慶應義塾大学, 商学部(三田), 准教授 (00510851)
笹原 彰 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 准教授 (30895751)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 家計調査 / 労働 / テレワーク / 機械化 / 雇用 / ジェンダーギャップ / 事業所 / 輸入競争 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果としては、国際貿易が男女間の賃金格差に与える影響を検証するために、理論モデルを構築して分析を行った。貿易財を生産する製造業と非貿易財を生産するサービス業の2つの産業があり、製造業の生産に比較優位がある男性労働者とサービス業の生産に比較優位がある女性労働者が存在する経済を想定した。製造業で貿易自由化が起こると、製造業に比較劣位のある国では、サービス業の拡大から女性労働者への需要が高まり、男女間の賃金格差が縮小するという結果が得られた。また、中国からの輸入の急増(いわゆるチャイナショック)の影響についての先行研究を整理し、成果を学術雑誌にサーベイ論文として公表した。 また、予備的な研究としては、以下の3点を行った。 一つ目に、慶應家計パネル調査(KHPS/JHPS)の質問票におけるグローバリゼーションへの選好に関する質問の作成に向けた準備を行った。日本の場合、貿易自由化に対しては積極的だったが、移民に関してはやや否定的な結果となることが分かった。また、この背景となる人々の主観的な選好に関して、人々の生活、仕事や余暇などがどう幸福度や生活満足度を左右するかを、内閣府の調査を基に予備的な研究を行った。 二つ目に、テレワークと機械化の可能性を職業別に整理した。2つのショックが雇用に及ぼす影響は、これらの可能性によって職業毎に大きく異なるので、この整理は非常に重要である。 三つ目に、政府統計の調査票情報の利用申請と実証分析の試行を行った。内閣府の「経済センサス」、経済産業省の「企業活動基本調査」、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」などの政府統計について貸与を受け、これらのデータを接続し、実証分析に用いるためのデータセットを構築した。そして、実証分析の試行として、輸入競争が事業所の参入、退出、拡大、縮小を通じて雇用に及ぼす影響を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウィルス感染拡大によって、いくつかの研究活動には支障が出ている。例えば、2021年度は慶應家計パネル調査(KHPS/JHPS)の実施でCOVID-19の特別調査が優先され、グローバリゼーションの選好に関する質問項目は質問票に入れることができなかった。また、外国への調査旅行は行うことができなかった。しかし、これらは本研究課題開始時においてある程度織り込み済みであり、研究全体としてはおおむね順調に進展している。グローバリゼーションとコロナウィルス感染拡大という2つのショックが賃金、雇用、消費、グローバリゼーションへの選好に及ぼす影響を分析する本研究課題において、2021年度はこれらの分析を実施するのに必要な予備的考察や準備は行うことができた。また、研究成果も論文としていくつか発表された。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、前年度の予備的考察や準備の結果を用いて、研究が本格的に行われ、研究成果もさらに発表される予定である。加えて、COVID-19に伴う行動制限も緩和され、アンケート調査の実施、海外研究者の招聘、国際学会への参加などが行えるようになるであろう。研究計画調書に記載したスケジュールに即して研究を推進してゆく。
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