2021 Fiscal Year Annual Research Report
Government Debts and Productivity: Financial Crisis in the East German Planned Economy
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21H00732
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中村 靖 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 名誉教授 (60189066)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 計画経済 / 社会主義経済 / 政府債務 / 生産性 / 資本市場 / 資金循環 / 国民経済計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ感染症流行により停止したドイツ公文書館における文献調査を一部再開できたため当初2021年度に予定していた研究段階まではほぼ実施できた.これにより,第1に,データ集積のあるソ連経済を対象としているものの旧東独への適用を想定した実物-金融マクロ経済フレームワークのプロトタイプを作成への着手が可能となった.東独データにはなお検討すべき点があるため,プロトタイプ・フレームワークに旧東独が基本的に準拠していた社会主義国国民経済計算基準である物的生産システム(MPS)を用いたソ連データを使ってを利用した論文として公表した.なお,このソ連データも公文書館で収集した非公表データである. 第2に,公表資料に公文書館資料を加えることで,旧東独経済の崩壊時の金融経済状況とその後のドイツ統一にともなう資本ストックの金融面,実物面での再評価問題について分析をすすめた.予想通り旧東独資本ストックの価値がほぼゼロであり,再建費用を入れればマイナス評価である可能性が高いことがあきらかになり,その結果を論文として発表した.世界市場評価での旧東独資本ストック価値がゼロであることは,本研究全体の出発点にある仮説の妥当性を強力に支持するものである.加えて,企業民営化・再建資金の調達,企業再建・経営戦略の作成,そこへ投下される資金効率評価という点で,統一後の民営化と資本市場との間に密接な相互関係があったことを定性的に示すことができた.この点は,今後,さらに定量的に検討すべき問題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ感染症により停止を余儀なくされたドイツ連邦公文書館における資料収集をようやく再開することができた.それによって,過去調査で欠落していた部分を一定程度は補足でき,東独マクロ経済の実物-金融フレームワークの試作にとりかかれる段階に到達できた.
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ感染症により停止を余儀なくされたドイツ連邦公文書館における資料収集はようやく再開することができた.なおも体系的に収集が進んでいるとは言い難い状況であるが,過去調査で欠落していた部分を重点的に調査することで,一定のまとまりをもったデータが集積されつつある. 今後,これら部分的に集積されたデータのデータベース化と分析とともになお収集にとりかかれていない資料の収集およびこれまでの調査で存在が発見された資料の収集をすすめる.資料集と同時に,収集済み資料により定量的分析用のマクロ経済フレームワークのプロトタイプの作成を開始する.
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