2021 Fiscal Year Annual Research Report
San'ya and Kamagasaki: Structure and its Transformation of Urban Bottom
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21H00789
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Institute on Social Theory and Dynamics |
Principal Investigator |
青木 秀男 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (50079266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大倉 祐二 松山大学, 人文学部, 教授 (00419681)
山口 恵子 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40344585)
結城 翼 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (50840493)
渡辺 拓也 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (70622067)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 山谷 / 釜ヶ崎 / 日雇労働者 / 野宿者 / 労働 / 都市雑業 / 居住 / 生活保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、山谷・釜ヶ崎の日雇労働者、雑業就業者、生活保護受給者、路上生活者の仕事・居住・生活を調査し、山谷と釜ヶ崎の共通・差異を分析し、寄せ場の類型的把握をめざす。2021年はコロナ禍により、十分な調査はできなかった。そのため、同年予定の調査の一部を2022年へ繰り越した。 2021年~22年(繰り越し)に、次のような調査を行った。一つ、国立・自治体・大学の図書館で、山谷と釜ヶ崎に関する関連資料の収集を行った。青木は、国会図書館の遠方複写サービスで大量の関連論文を入手した。二つ、研究会やシンポジウムに参加し、関連情報を収集した。(1)社会理論・動態研究所主催の下層労働研究会、山谷・釜ヶ崎研究会、Workshop on Urban Bottom(いずれもズーム、隔月)、(2)釜ヶ崎の街づくりシンポジウム(対面参加、2022年2月)、(3)香港大学の都市研究者Pun Ngaiさん等の国際シンポジウム(青木、ズーム、2022年2月)。、三つ、研究代表者と分担者の間で、山谷・釜ヶ崎研究の目的・仮説・方法について研究会を行った。全体会議をもち、調査の進行状況を報告し、分析枠組について議論した(隔月、ズーム)。四つ、労働者、福祉受給者、路上生活者、行政関係者、労働運動家、NPO関係者に対する面接調査を行った。夏祭りや越冬闘争 、夜間パトロール、炊き出しなどの行事・催しへの参与観察を行った。これらの調査は東京班、大阪班ごとに行った。五つ、研究代表者・青木は、2021年12月、2022年1月、2月に大阪で、繰り越し後の2022年4月、8月に東京で(宇都宮市から研究協力者が合流した)、同年6月~7月に大阪で資料収集、聞き取り、参与観察を行った。分担者・山口は、同年11月に青森で関連資料を収集した。 これらの活動により、2021年度予算で予定した調査をほぼ完了することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため2021年に予定した山谷・釜ヶ崎での聞き取りは捗らず、調査の一部を22年へ繰り越した。山谷・釜ヶ崎の路上に人は少なく、人々はドヤやアパートに閉じこもった。代表者・分担者の側も対面での調査ははばかれた。代表者・分担者がもつネットワークを手づるに、協力的な調査対象者へのズームでの聞き取りができただけで、2021年中に予定した数の調査対象者を得ることは困難であった。マスクを着けての聞き取りは、相手の顔の表情が見えないため細かい話に踏み込むこと容易でない。これも聞き取りの制約となった。さらに日雇労働者や野宿者、生活保護受給者の生活場面(仕事探し、炊き出し、野宿、ドヤやアパートの暮し)の参与観察も、あまりできなかった。 2021年の調査の遅れを22年に繰り越して行った。調査は、現場での聞き取りや参与観察を行ったが、オンラインでの文献資料の収集やズームでの研究会等による関連情報の収集の比重が大きくなった。もとよりそれも本研究の仮説や理論の形成のための重要な作業である。しかし、現場での聞き取りや参与観察から得られる情報が限られたため、データの検証による仮説の補強や理論の展開には限度があった。このように、調査の一部が2022年度へ延長されたのは、ひとえにコロナ禍による制約のためであった。 しかし、調査を2022年へ繰り越してできたことで、21年に予定した調査はほぼ完了できた。東京・大阪に住む分担者(山口、渡辺、結城)は、山谷・釜ヶ崎での対面の聞き取りもできた。ズームによる研究会などへの参加、文献資料の収集は、全員で行った。代表者と分担者の議論もしっかりできた。本研究の調査は、これらの成果を受け、2022年度以降の予定に従って、継続することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の終息のメドはつかないが、研究代表者・分担者は、2021年度の成果を受け、22年度の調査も、創意工夫を凝らして進めようと決意した。まず、代表者や分担者がもつネットワークを最大限に活用し、調査対象者(日雇労働者・野宿者・生活保護受給者)に友人の紹介を依頼して新たな調査対象者の獲得をめざす。次に、長年の信頼関係があり、ズームでの協力依頼が可能な行政職員や活動家、NPO団体スタッフの聞き取りを行う。さらに可能なら、調査対象者の生活場面の参与観察を行う。縮小された越冬闘争や夏祭り、夜間の野宿パトロールに参加する。他方で、代表者と分担者、分担者の山谷班と釜ヶ崎班の情報共有のための研究会をしっかり行う(生活保護受給者が住民のほとんどを占める山谷と、まだ現役の日雇労働者が少なくない釜ヶ崎との比較研究は、本研究の中心課題の一つである)。2022年はこれらの調査活動を行うことを、全員で確認した。 またコロナ禍の悪条件を逆用し、オンラインを中心に関連情報の収集に力を入れる。文献資料により山谷・釜ヶ崎の高度経済成長前後とその後の変遷を追い、今日の寄せ場(日雇労働者と野宿者)の歴史的背景を知る。次に北九州市の旧炭鉱地帯の歴史を追い、寄せ場(山谷・釜ヶ崎)の原点を知る。さらに代表者青木は、別の基盤研究Aの代表でもあるが、そこで得られた世界のグローバル都市 (ニューヨーク、パリ、マニラ、メキシコシティ、ナイロビ)の底辺層(労働者、スラム、ホームレス、難民)に関する情報と山谷・釜ヶ崎の状況とを対照させ、日本の都市底辺の特徴を明確にする。このように歴史と空間の視野を拡げて、現在の山谷・釜ヶ崎とその人々の理解を深め、本研究のデータ解釈と理論展開に役立てる。2022年の繰り越し調査の終了時点で、このような本研究の新たな推進方策を考えた。
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Research Products
(2 results)