2021 Fiscal Year Annual Research Report
医療機関を起点とした生活課題をもつ人への地域連動型支援プログラムの開発研究
Project/Area Number |
21H00791
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
杉崎 千洋 島根大学, 学術研究院人間科学系, 教授 (60314613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 達也 桃山学院大学, 社会学部, 教授 (30320419)
金子 努 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (70316131)
松崎 吉之助 相模女子大学, 人間社会学部, 准教授 (60736114)
正野 良幸 京都女子大学, 家政学部, 講師 (90514167)
富井 友子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 准教授 (60643707)
田中 涼 美作大学, 生活科学部, 講師 (70850030)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 病院・診療所 / 心不全患者 / 再入院の社会的要因 / 心不全の経験 / 社会的処方 / 地域連動型支援プログラム / 再入院減少 / その人らしい地域生活 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、研究の4つの柱のうち心不全患者の再入院要因研究、病いの経験研究に重点を置いて進めた。以下、4つの柱別に説明する。 ①心不全患者の再入院要因研究:心不全患者の前向き観察研究により、再入院の社会的・医学的要因を明らかにすることが目的である。協力病院との新型コロナ感染症対策を含めた調査方法の協議、心不全再入院要因に関する先行研究のレビューなどをし、研究倫理審査に必要な文書を作成した。統括者の所属大学、協力病院の研究倫理審査委員会において承認された。 ②心不全患者の病いの経験研究:研究の目的は心不全者の生活や仕事上の困難とその対処戦略、病いをもつ自己の意味の受け止めの変遷を明らかにすることである。実績としては、a.協力医療機関の研究倫理審査委員会で承認を得た。b.協力医療機関の医師、医療ソーシャルワーカーと調査対象となる心不全患者像の確認を行った。c.調査対象である心不全患者数名に調査概要の説明を行い協力についての同意を得た。 ③社会的処方研究:日本社会においても新たな課題となっている社会的孤立について先進的な取り組みを行っているイギリスの対策について、文献やインターネットから情報収集を行った。孤立・孤独である人々と地域資源とをマッチングする社会的処方のリンクワーカーの所属機関や役割を検討した。 ④地域連動型支援プログラム開発研究:大島巌らの効果モデルの構築に関する理論、および、源由理子の参加型評価に関する理論を基礎にしている。これらをもとに、プログラム開発の進め方について科研の研究者での検討会、および現場の実践者を交えての検討会を行った。効果モデル構築のステップ作業を確認したうえで第1次効果モデルの試行版の完成を目指すことになった。また、参加型評価については、実践者がどの程度関わるかは継続的な課題と確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度の研究の主な柱である心不全患者の再入院の社会的要因研究、病いの経験研究の実施計画を、協力医療機関と検討した。その過程で、新型コロナウイルス感染症対策のため医療機関への調査員立ち入り禁止など、調査を実施するに当たり大きな課題があることが判明した。これらを解決するために、医療機関との調整に時間を要したことが最大の理由である。 他の2つの柱である社会的処方研究、地域連動型支援プログラム開発研究は、おおむね順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の4つの柱別の推進方策は次のとおりである。 ①心不全再入院要因研究:協力病院に入院した心不全患者の入退院時の医学的・社会的状況、これらの患者の退院6か月後、1年後までの心不全増悪による再入院の有無などを調査する。調査開始は2022年4月、入院時調査終了は2023年3月、追跡調査終了は2023年度末の予定である。2022年度中に中間的分析を実施し、再入院の社会的要因の予備的検討を行い、④の支援プログラム開発研究の場において報告していく。 ②病いの経験研究:協力医療機関に通院する心不全患者10名程度に対するインタビュー調査を実施する予定である。インタビューの実施と並行して、質的記述的分析法によりインタビューデータの分析も進める。分析は研究者メンバー間の相互チェックの他、外部アドバイザーに協力を依頼し内容の妥当性と信頼性を高め、学術誌への投稿、学会報告の準備を進める。また調査分析結果を支援プログラム開発の研究会に適宜報告していく。 ③社会的処方研究:イギリスにおける具体的展開について、循環器系疾患患者を中心に分析していく。社会的処方の制度・政策や財源、地方自治体の役割、リンクワーカーと医師やソーシャルワーカーとの関係性を文献などにより明らかにする。それらをもとに2022年度、コロナの状況によっては2023年度に予定している現地調査の枠組みや質問項目を作成する予定である。 ④地域連動型支援プログラム開発研究:心不全患者の再入院要因研究や病いの経験研究により得られるニーズの評価、国内の社会的孤立や貧困軽減策などの現状分析・実態調査、社会的処方を含む先行事例の収集などを前提とし、その知見を踏まえながら進めていくことになる。その進め方のポイントは現場の実践者を交えての参加型評価となる。今後の研究の進捗状況に応じて、効果モデルの検討を実践家の参加を得て、ワークショップにより実施する。
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Research Products
(2 results)