2021 Fiscal Year Annual Research Report
The effect of music training for deaf and hard of hearing people to acquire non-speech sound
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21H00884
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
平賀 瑠美 筑波技術大学, 産業技術学部, 教授 (70327021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安 啓一 筑波技術大学, 産業技術学部, 講師 (70407352)
寺澤 洋子 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (70579094)
田渕 経司 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80361335)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 聴覚障害 / 音楽聴取 / トレーニング / 音楽要素 / 音楽認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の研究では、聴覚障害者の非言語音(音楽と環境音)の聴取向上のために、楽しく自発的に継続的に取り組めるような音楽トレーニングシステムを作成し、トレーニングを実施することを目指す。 そのためには、まず、聴覚障害者の音楽聴取の現状を知る必要がある。また、どのような音楽トレーニングシステムが受け入れられやすいかを知る必要がある。また、トレーニングでは段階的に取り組む課題を難しくしていく必要がある。2021年度は、聴覚障害者の音楽聴取の現状を知り、トレーニングで用いるコンテンツの難度の指針を明らかにするために、プロトタイプ作成と試用実験を行った。音楽の要素(メロディとリズム)、楽器音同定、選択的聴取の三つの要因を用いた三つのプロトタイプをiOS上で動くアプリとして作成した。実験で使用する音楽は、J-Popから選んだ。これにより、コロナ感染で対面では難しい実験をオンラインで行い、聴覚障害がある実験参加者が耳にすることが多いと考えられる音楽を用いて、参加者それぞれが日常音楽を聴取する環境での実験を実施した。三つの実験いずれにおいても、実験参加者は課題音楽と選択音楽のセットを提示され、課題音楽と同じ音楽を選ぶ、という形式で行い、その回答を調査した。 いずれの要因に関しても、聴覚障害者の正答率は高かった。トレーニングに正答率の高いコンテンツを使用するのでは効果が望めないため、コンテンツを作り直して再実験を行い、実験条件に関して検定を行った。この結果から、メロディの認知と楽器音同定について、コンテンツ聴取の難度についての基準を作るための理解を得ることができた。これにより、どのようなコンテンツを用いれば、我々が目指す音楽トレーニングの効果が期待できることの予測ができるようになった。これらの実験結果は、国内の研究会で発表し、国際会議でも発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の研究実施計画に記したとおり、音楽トレーニングのプロトタイプの設計・作成を行った。プロトタイプは、トレーニングとしての試用実験としての用い方はせず、トレーニングで用いる音楽コンテンツはどのようなものが有用であるかの検証実験を行った。プロトタイプは、Flutterを用いてiOS上で動くものとして作成した。プロトタイプ上で用いる音楽コンテンツは、音楽トランスクリプションとボーカル抽出の方法で作成した。プロトタイプシステムは、課題音楽コンテンツ提示後、選択肢となる音楽コンテンツを3つ提示し、課題音源と同じものはどれかを問う、という使い方をする。2021年度は、作成した3つのプロトタイプそれぞれで音楽の要素(メロディとリズム)、楽器音同定、選択的聴取の三つの要因に関する実験を行った。 それぞれの実験で20名程度の聴覚障害者が参加した。聴覚障害者について聴力、補聴器機の種類、音楽経験と正答率との関係を調査した。また、正答率から三つの要因それぞれについて課題の難度を決定するための指針を考えた。聴覚障害者の正答率は、実験実施者の予想を超えて良かったため、今後、プロトタイプシステムを改変して音楽トレーニングシステムとするために、難しすぎない、しかし、簡単すぎない音楽コンテンツの選び方が非常に重要であることを改めて確認した。2021年度に得たこれらの知見を元に、音楽トレーニングシステムの音楽コンテンツの設計方針を立てた。
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Strategy for Future Research Activity |
音楽トレーニングシステムは、課題音楽コンテンツと選択肢音楽コンテンツいずれも能動的に聴取することを繰り返すことにより、音楽聴取に慣れ、聴覚障害者の音楽聴取を向上させることを目的とする。今後は、プロトタイプシステムのユーザインタフェースの変更と音楽コンテンツを充実することにより、聴覚障害者が一人でも楽しんで繰り返し積極的に遊んでみたいと思えるような音楽トレーニングシステム、音楽トレーニングを意識させず、音楽ゲームを遊んでいると感じられるようなシステムの構築を目指す。このようなシステムの設計においては、聴覚障害の当事者にデザイン時から参加してもらい意見をもらう。 音楽トレーニングシステムを作成した後には、音楽トレーニングを繰り返すことで、音楽聴取が向上するのか、音楽に対する気持ち(appraisal)は変化するのかを、調査する。また、音楽聴取が音楽以外の非言語音である環境音聴取にも影響があるのかを調査したい。このために、トレーニングの使用実験の設計を行う。 さらに、トレーニングシステムで使用するコンテンツを聴覚障害者自身が選択してトレーニングシステムに導入することを行うワークショップを実現する。近年、補聴器機の進化により、聴覚障害者の音の取得は向上しているが、単なる音の取得からさらに進んで、音の認知を確実なものにするために、自分で聴き取りたい音をトレーニングシステムに入れることを行うワークショップである。このことにより、我々が作ろうとしている音楽トレーニングシステムは一方的に聴覚障害者が受け取るものではなく、聴覚障害者自身が作成により深く関わっていくことができる。
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Research Products
(4 results)