2022 Fiscal Year Annual Research Report
健康、防犯、防災行動を規定する社会ネットワーク構造の解明
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21H00929
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高木 大資 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (10724726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 貴仁 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 室長 (20356215)
相馬 敏彦 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 准教授 (60412467)
大山 智也 東北大学, データ駆動科学・AI教育研究センター, 助教 (80893776)
畑 倫子 学校法人文京学院 文京学院大学, 人間学部, 准教授 (90727918)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 社会ネットワーク分析 / 防犯活動 / 中心性 / ソシオセントリックネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
千葉県の一自治体内の全自治会長233名を対象に郵送調査を行い(回収率76.8%)、防犯に関する自治会活動の頻度および自治会間のネットワークを測定し、組織間ネットワーク構造が各組織の活動をどのように規定しうるかを検討した。 具体的には、調査時、各自治会長に他の自治会名が記載されたリストを提示し、「会長と個人的に知り合いである」、「防犯活動を一緒に実施している」、「健康づくり活動を一緒に実施している」などの各種のつながりを有する自治会を指名してもらい、それを基に自治会間ネットワークデータを作成した。くわえて、特殊詐欺予防のために「独居高齢者宅への訪問・注意喚起」、「住民のための防犯講話の実施」、「迷惑防止電話機器の共同購入・設置」といった活動を行っているかを尋ね、組織間ネットワーク構造と防犯活動の関連について分析した。 分析の結果から下記の知見が得られた:①「会長と個人的な知り合い」であることや「健康情報を交換し合っている」といった、防犯とは一見無関係なつながりに基づいたネットワークが防犯活動の普及と関連していた;②他の自治会とのつながりを多く持たない自治会であっても、中心的で活動的な自治会との紐帯を1つ有することが防犯活動の活発化と関連していた。 ①の知見からは、防犯活動の普及には防犯とは直接関係がないネットワークが鍵となる可能性があり、地域防犯活動の活発化のためには防犯に特化した組織間ネットワーク構築だけでなく、他の活動に基づいたネットワークや会長間のインフォーマルなつながりを整備する「ゼロ次予防」的な方略が有効である可能性が示唆された。②の知見からは、単に自治会間ネットワークの密度を高めるのではなく、特定の自治会とのつながりを構築することが各自治会の活動の活発化に資すると考えられ、行政によるネットワーキングの場や合同ミーティングの設定が有力な介入方略となる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は2モードネットワークを用い地域住民間ネットワーク構造と行動の関連について研究成果をまとめ、今年度は自治会間のソシオセントリックネットワークデータを用いた地域組織間ネットワーク構造と活動の関連についての解析が完了した。おおむね当初の予定通り、諸種のネットワークと行動・活動の関連についての知見の獲得が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、自治会間ネットワークデータを用いた分析結果の、英文ジャーナルでの出版を進める。すでに②の知見はEvaluation and Program Plannning誌に投稿され、現在査読中である。 次年度以降は、以下の二つの研究を推進する。 ①複数の集団を対象に、集団ごとのソシオセントリックネットワークおよび予防行動の普及率を測定し、どのようなネットワーク構造が集団内での予防行動の普及と関連するのかを検討する。社会ネットワーク論においては、行動の普及には構造的空隙が存在するような非冗長的なネットワークが有効であるとする議論と、成員が密につながり合っているネットワークのほうが有効であるとする議論の両方が存在する。本研究ではクラスタリング係数、拘束度、集中度といった構造的指標と集団ごとの予防行動の普及率の関連を検討することにより、行動の種類ごとにどのようなネットワーク構造が普及に資するのかを明らかにする。 ②個人のエゴセントリックネットワークに焦点を当て、防犯以外の予防行動との関連を検討する。具体的には、子育て世代(子どもの防犯)および恋人・パートナーがいる若年世代(親密者間暴力の抑制)を調査対象とし、ネームジェネレータ法を用いてパーソナルネットワークの構造を測定し、どのような社会関係を有していることが予防的な行動と結びつきやすいのかを検討する。この検討を通じ、(1)予防的に作用するネットワークの特徴はどのようなものか(開放的 or 閉鎖的、同質的 or 異質的)、(2)遠隔地に住む知人やオンラインを通じてコミュニケーションする知人が予防行動に与える影響は、地縁に基づくネットワークからの影響と比べてどのような違いがあるか、といった点を検討する。 これらの研究により、多世代の多様な行動への、社会関係を考慮した介入方略のためのインプリケーションを得る。
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