2021 Fiscal Year Annual Research Report
ダイバーシティ社会における包摂性概念の精緻化とその機能の検討
Project/Area Number |
21H00933
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
坂田 桐子 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (00235152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森永 康子 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (60203999)
小宮 あすか 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (50745982)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 組織・集団 / インクルージョン / ダイバーシティ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,わが国では,多様な人々をどうすれば包摂(Include)し,その能力を活かせるかという問題に高い関心が寄せられている。しかし,多様性の概念や効果に関する実証研究は豊富に蓄積されつつあるのに対し,包摂性(Inclusion)の概念と効果に関する社会心理学的研究は世界的に見ても極めて少ない。本研究の目的は,包摂の対象となる個人が知覚する包摂性に焦点を当て,包摂性の構成要素を明らかにすると共に,包摂性が個人と集団に及ぼす影響について検討することである。令和3年度は,包摂性の構成要素として所属性,正真性,及び独自性の3要素を仮定し,この3要素の妥当性を様々な集団において検討した。 職場の部署に所属する600名(A群),部活・サークルに所属する大学生及び地域の集団(趣味のサークルなど)に所属する社会人600名(B群),部活・サークルに所属しない大学生及び地域の集団に所属していない社会人574名(C群)に調査を行い,3要素と包摂性関連指標(状態自尊心,自己確証,心理的安全)との関連を検討した。A群については所属部署,B群については所属の部活・サークルや地域の集団,C群の大学生については所属学科,社会人については地域における包摂性についての回答を求めた。その結果,A,B,C群のいずれについても,包摂性3要素は自己確証及び心理的安全との間に予測通り正の関連を示した。状態自尊心についてはいずれの集団についても独自性が最も強い正の関連を示したが,所属性と正真性については関連が弱かった。3要素は包摂性の構成要素として,いずれの集団においても概ね妥当であると考えられるが,指標によっては3要素全てが関連するわけではないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに調査を実施した。行うべき分析の一部が終了していないものの,令和3年度当初の目的を概ね達成できている。また,令和4年~5年度の目的である「包摂性の高さが個人及び集団に及ぼす効果の検討」に関わるデータの一部を,令和3年度の調査項目に含めて収集済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究で包摂性3要素を測定する尺度を確定したため,その尺度を用いて今後の研究を行う。特に研究計画に変更はなく,令和4年度は職場と大学生の集団所属者を対象に,包摂性の高さが個人及び集団に及ぼす効果を解明するための縦断調査を行う。なお,コロナ禍によりテレワークやオンライン授業が常態化している可能性があり,その点が部署や所属集団における包摂性の知覚に影響する可能性があるため,それらの影響を考慮しつつ検討を行う。
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