2023 Fiscal Year Annual Research Report
多変量大規模縦断研究による動機づけの精神病理抑制効果と発達メカニズムの解明
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21H00940
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
伊藤 大幸 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (80611433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村山 恭朗 金沢大学, 人文学系, 准教授 (00728785)
浜田 恵 中京大学, 心理学部, 准教授 (00735079)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 発達精神病理学 / 縦断研究 / 動機づけ / 自己決定理論 / いじめ / 不登校 / 抑うつ / 攻撃性 |
Outline of Annual Research Achievements |
不登校、いじめ、自傷行為など、児童・青年期に顕在化する精神病理の発生機序に関する研究では、リスク要因の作用を前提とするモデルが広く採用されてきた。一方、研究代表者らは長期の大規模縦断研究により、リスク要因やその影響を緩和する保護要因では十分に説明できない精神病理があり、第3の要因として、ウェルビーイングをもたらす促進要因に着目する必要性を見出した。本研究では、これまで主に学習・教育の文脈で研究されてきた動機づけ概念が、精神的健康の促進要因としても重要な役割を果たすというモデルを提唱し、①動機づけの状態が、多様な精神病理の抑制にどのような貢献を果たすのか、②個体発生の過程において、動機づけやその背後にある心理特性がどのように形成されるのかを解明する。乳幼児から中学生までの約1万名を対象に5年間の系列的縦断研究を実施し、発達精神病理学モデルの再構築につながる基盤的エビデンスの提供を目指す。 今年度は、前年度までに引き続き、中部地方の中規模都市に所在する全ての小中学校で3回目の縦断調査を実施し、小学4年生~中学3年生の児童生徒5078名(男子2535名、女子2543名)および担任教員318名(男性133名、女性185名)から回答が得られた。交差遅延モデルに基づく分析の結果、学習動機づけの状態が、リスク因子(友人関係ストレス、家庭ストレス、学業ストレスなど)や保護因子(ソーシャルサポート、感情制御など)とは独立に、次年度以降の抑うつ、攻撃性、不登校、非行などの情緒・行動問題を予測することが示され、とりわけ非行に対しては際立って高い説明力を持つことが確認された。これらの調査結果に基づき、成果発表の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の通り、調査対象市の全ての小中学校で調査を実施し、児童生徒および担任教員から9割を超える有効回答が得られた。また、仮説に一致し、学習動機づけの状態が多様な情緒・行動問題の発生を予測することが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き同一の対象校で系列的縦断調査を実施し、①動機づけの状態が、多様な精神病理の抑制にどのような貢献を果たすのか、また、②個体発生の過程において、動機づけやその背後にある心理特性がどのように形成されるのかを検証する。
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Research Products
(15 results)