2022 Fiscal Year Annual Research Report
頭足類の「個のない社会」の形成維持機構に関する鳥類・哺乳類との比較研究
Project/Area Number |
21H00962
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
池田 譲 琉球大学, 理学部, 教授 (30342744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊澤 栄一 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (10433731)
川合 伸幸 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (30335062)
村山 美穂 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (60293552)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 頭足類 / 鳥類 / 霊長類 / 社会 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
頭足類:アオリイカに同種のアニメーションを提示し、同種へ関心を示しつつ接近するものの、至近距離になると離反するという、群れ形成と維持に関わる基盤的行動を明らかにした。また、アオリイカの性格を行動実験から調べ、活動性、攻撃性、探索性、大胆性、社会性という側面に関わる性格を特定した。 霊長類:左右2つの穴に餌が隠された状況でCGマーモセットと対峙したときに、先にCGマーモセットが選んだほうでない穴を取れるかを調べるために、まず左右の位置弁別学習とその逆転学習を胎生期にバルプロ酸を投与された自閉症モデル(VPA)マーモセットと非投与マーモセットで実施した。その結果、いずれの個体も位置弁別を習得した。学習基準に到達するまでの平均到達セッション数は、非投与群が5.8回、VPA群が4.8回で大きな違いはなかった。これらのことから非社会的な場面での学習は、非投与群、VPA群ともに同じ程度に可能であることが示された。 鳥類:独立に飼育された2群のカラスに対して、新たな群れの社会構造形成について調べた。その結果、群れ内の毛づくろいネットワークが弱い群れからは個体が離脱しやすく、他方の群れに合流することが確認された。3週間後、元の群れにおける相対順位は維持されていた。つまり、カラスにおいては過去に形成した優劣順位関係は維持されることが示唆された。また、群れ内における個体のストレスを今後分析するために、唾液を用いることによる低侵襲的なコルチゾル計測系を、鳥類では世界で初めて確立した。 遺伝子解析:ネコ300個体以上の質問紙による性格評定と、オキシトシン受容体などの遺伝子型の情報を収集した。マーモセット、アカゲザル、カニクイザルについて、ミエリンの形成と維持に関わるスフィンゴ脂質代謝遺伝子の多型と性格や行動の関連を解析した。アジアとガーナの在来犬やオオカミを対象に、全ゲノムシークエンスを行って、性格関連する領域を比較した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ヴァーチャル・リアリティを活用して社会性に関わる事柄を検証できたことに加え、鳥類の低侵襲的なコルチゾル計測系を世界で初めて確立し、オキシトシン受容体などの遺伝子型の情報を得るなど、今後の研究展開につながる大きな成果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ、本研究の中心的な手法であるヴァーチャル・リアリティを用い、社会性に関わる事柄を具体的に検証できた。また、行動に関わるホルモンの計測も高い精度で行えるようになり、その関連遺伝子についての調査を進めることもできた。今後はこれらを踏まえ、個体の性格と社会性に関わる行動の表出との関係の検証を進めるとともに、性格に関わるホルモン受容体遺伝子の解析を進めていく。また、研究の進捗について、代表者と分担者で積極的に相互確認し、意見交換を行なっていく。手法について、改良すべき点が見つかれば適宜改変を加え、的確なデータの取得に努めるようにする。
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Research Products
(16 results)