2021 Fiscal Year Annual Research Report
Neural mechanism of helping behavior based on empathy
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21H00965
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 暢哉 関西学院大学, 文学部, 教授 (70465269)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 向社会的行動 / 援助行動 / オキシトシン / 齧歯類 / 平原ハタネズミ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,他個体への共感を通して生起する援助行動の心理プロセスおよび神経メカニズムを明らかにすることである.高い社会性を示す平原ハタネズミを対象として,窮地に陥っている他個体に対する援助行動が,その他個体への共感によって生じることを実証する行動データを補強しつつ,共感から援助行動へと至る心理プロセスにオキシトシンがどのように関与するのかを明らかにする. 本年度は,野生型の平原ハタネズミに対して,研究代表者の研究室で開発した齧歯類に対する援助行動の実験パラダイムを適用し,平原ハタネズミにおいても窮地に陥っている他個体への援助行動がみられることを示した.用いた実験課題は,嫌悪的である水に浸された同居他個体を,ドアを開けることによってその浸水状況から逃れさせることができるというものであった.同居他個体側の区画に水がない場合,つまり,当該個体が嫌悪的状況にない場合は,ドア開け行動の学習が阻害されたことから,この行動が援助される側の個体の嫌悪感に対する共感にもとづいた援助行動であることを示している. また,オキシトシン受容体が作用できなくなるように遺伝子改変が施されたオキシトシン受容体ノックアウトハタネズミにおいて,同じ実験パラダイムを使用して援助行動を検討した.その結果,野生型のハタネズミに比べて,援助に相当する行動の学習に時間がかかることが分かった.さらに,バソプレシン受容体をノックアウトした平原ハタネズミにおける援助行動の実験についても開始した. さらに,平原ハタネズミの後肢にホルマリンを注入して痛みを誘発する手続きを用いて,ペアにしたハタネズミに与える痛み刺激の程度を操作する実験を行った.その結果,他個体の痛みの状況によって自身の痛みに変化がみられる傾向が認められた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,平原ハタネズミが示す,窮地に陥っている他個体に対して共感することで生じる,その窮地から助け出す援助行動と,オキシトシンおよびバソプレシンの関与に着目した実験を実施する予定であった.オキシトシン受容体ノックアウト個体については十分なデータを集めることができた.バソプレシン受容体遺伝子がノックアウトされた平原ハタネズミの援助行動のデータについては実験を継続中である. また,共感性という観点では,野生型の平原ハタネズミを対象に,他個体の痛みの状況が自身の痛みに対して影響する可能性を示すことができた.この点については今後も実験を継続してデータを補強していく予定である. 二者間の社会的つながりが強い場合の援助行動の実験については,実験は実施したが,社会的絆を形成する手続き,あるいはその確認の手続きに修正が必要であることが分かったので,その点を改善して実験を継続する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
援助行動におよぼすバソプレシンの影響については,今のところ明確な行動傾向を判断するために十分なデータを収集できている状況ではないので,そのことを検討することを目的として,今後もバソプレシン受容体ノックアウト平原ハタネズミを対象とした援助行動の実験を継続していく予定である.オキシトシンと共通点の多いホルモン・伝達物質であるバソプレシンと援助行動の関連についても検討することで,これらの神経ペプチドの共感・援助行動における機能を明らかにしたい.また,オキシトシン受容体を有している神経細胞の神経連絡について明らかにし,さらにその神経細胞の活動を操作することで,その活性化/抑制が平原ハタネズミの援助行動の学習に与える影響を検討していく.これらのことによって,オキシトシンを介した神経ネットワークがどのように機能して共感および援助行動を引き起こすのかを明らかにしたい.
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Research Products
(13 results)