2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21H00967
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
菅原 翔 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主席研究員 (80723428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福永 雅喜 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 准教授 (40330047)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 意欲 / 中脳 / 運動 / 自発的制御 / 超高磁場MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、「自発的な意欲は腹側中脳の自発的な活動水準として表現され、準備活動を高めることで身体運動を促進できる」との仮説を立証するために、(1)腹側中脳の自発活動水準が後の運動出力へ影響することを因果的に示し、(2)情動的なイメージを用いた自発的な腹側中脳の活動水準操作により、高揚感と共に運動出力が自己制御できることを明らかにする。 2021年度は感染症蔓延に伴う緊急事態宣言による出張制限の影響で、生理学研究所でのRealtime fMRI計測環境の構築に遅れが生じた。そのため、情動的なイメージを用いて自発的に脳活動を操作する実験を優先的に実施した。事前の行動実験によって、自身の目標を達成する状況をイメージすることで、通勤中の場面をイメージすることやイメージをしない場合に比べて、より肯定的で覚醒度が高い感情が喚起されることが示された。さらに、この情動的な達成イメージの直後に行う把持動作は、より素早く強い力で実行されることが明らかになった。出張制限や7テスラ装置の故障に伴う中断によって2022年に繰り越して実施することになったが、7テスラfMRI実験も完了することができ、意欲と関連する腹側中脳と中帯状皮質前部が、情動的達成イメージ中に賦活することが明らかになった。これらの成果に基づき、イメージによって意欲関連領域の活動を高められることで、直後の運動パフォーマンスが高まることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は腹側中脳のRealtime fMRIを実行する計画であったが、緊急事態宣言の影響もあり環境構築に時間がかかる見通しとなった。そこで、Realtime fMRIの実現を待たずに実行できる情動的イメージを用いた実験を優先することとした。 「情動的イメージによって高揚感と運動出力を自己促進できる」という仮説を、行動実験を行うことで立証することに成功した。この情動的イメージによる促進効果が腹側中脳の自発的賦活によって媒介されることを立証するため、7テスラMRI装置を用いたfMRI計測を実施した。7テスラMRI装置内でも情動イメージによる運動出力の促進効果を再現することができ、情動イメージによって腹側中脳が賦活することを示した。本研究の成果により、情動イメージという随意的に制御できる方略によって、意欲関連領域である腹側中脳を自発的に賦活させることで、運動成果を促進できることが明らかになった。本研究課題の目的の1つは、情動的なイメージを用いた自発的な腹側中脳の活動水準操作により、高揚感とともに運動出力を自己制御できることを明らかにすることである。感染症蔓延の影響による繰越があったものの、研究期間の前半が終わる前に2つの目的の内の1つ目で大きな進展があったことから、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
7テスラ装置でのRealtime fMRI環境が未完成であること、感染症蔓延による影響が断続的に続くことを考慮し、東京都内の3テスラ装置を用いてRealtime fMRI実験を推進する。なお、東京工業大学の3テスラ装置を借りて外部参加者を対象とする実験ができる状況を整えることはできている。 これまでの実験を通じて情動的イメージによって、腹側中脳と中帯状皮質前部の両方が賦活し、後の運動出力とも関連することが明らかになった。中帯状皮質前部は体積が大きく、脳深部の腹側中脳に比べてfMRI計測が容易である。また、中帯状皮質前部への電気刺激によって目標志向的行動が誘発されるという知見も報告されている。これらの点を考慮し、3テスラ装置でのRealtime fMRIの標的を中帯状皮質前部とし、fMRIニューロフィードバックを用いた自発的活動促進が運動出力へ与える効果を立証する予定である。さらに上記の3テスラRealtime fMRIの実験を並行して、7テスラ装置でのRealtime fMRI計測の準備を進める計画である。
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