2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H00974
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤野 修 京都大学, 理学研究科, 教授 (60324711)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 極小モデル理論 / 混合ホッジ構造の変動 / 消滅定理 / 複素解析空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は極小モデル理論の解析化の研究を推進した。極小モデル理論は本来射影多様体に対する理論である。特異点論への応用や代数多様体の退化の研究のためには、極小モデル理論を複素解析空間の間の射影射に一般化することは不可欠である。穏やかな特異点をもった多様体に対しては、Birkar--Cascini--Hacon--McKernanによる大論文(BCHMと略されることが多い)で、極小モデル理論の多くの部分が完成している。私はすでにBCHMを複素解析空間の間の射影射に一般化することに成功している。この一般化は2021年度の後半に研究し、プレプリントは公表済みである。極小モデル理論の基本定理たちは非常に悪い特異点を持った対象にまで一般化されている。これは私が長い年月をかけて確立した話である。2022年度はこの私の過去の一連の仕事を複素解析空間の間の射影射に一般化することに全エネルギーを注ぎ込んだ。概ね満足できる結果を得ることができ、結果は複数のプレプリントとして公表済みである。また、この研究のために必要となった消滅定理を理解するために藤澤太郎氏(東京電機大学)と混合ホッジ構造の変動の理論も研究した。いずれにせよ、非常に成果の上がった一年であった。ただ、世界の流行と無関係に他の人が避けるようなハードな部分を扱った仕事であり、Top10%論文には絶対にならないプレプリントばかりだと思う。さらにコロナ禍で引きこもり生活での研究であり、ほぼ全て単著論文である。国際共著論文や国際共同研究はないので、やはり高く評価されないのではないか?と思う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本科研費を申請していた時の想定をはるかに超えた成果が上がっている。申請段階では極小モデル理論の解析化やそれに必要となる消滅定理の確立などは、問題として考えられるが、数年以内に実現可能な目標とは考えていなかった。研究者を引退するまでに実現できたらいいかな?とぼんやりと考えるぐらいの夢のような話だった。ところが、コロナ禍での引きこもり生活で真剣に問題を考える時間ができ、流行の話題に振り回されるようなこともなく、集中して考えたらあっさりと壁を突破し、今までわからなかったことがドミノ倒し式にどんどんと解決した感じである。このような感じで、もう本科研費の申請書を書いた当時には考えもしなかったレベルで研究成果は上がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍で引きこもり生活を3年間続けたが、2023年度は少しだけ出張などで研究者の社会に復帰したいと考えている。引きこもり生活は私の数学の研究にとっては非常にプラスだったと思う。元々流行とは無関係の話題を扱い、人と議論をするよりはじっくりと一人で考えて研究するタイプであった。コロナ禍での引きこもり生活はじっくりと考える時間が増え、論文の生産能力もかなり上がったと思う。2023年度はどれだけコロナ禍以前のような状態に戻るのか不明だが、ぽつぽつと近場の国内出張ぐらいは実施し、研究成果の宣伝や新しい研究の情報収集も行っていきたい。
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