2021 Fiscal Year Annual Research Report
Research of logarithmic vector fields of hyperplane arrangements
| Project/Area Number |
21H00975
|
|---|
| Allocation Type | Single-year Grants |
|---|
| Research Institution | Kyushu University |
|---|
Principal Investigator |
阿部 拓郎 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (50435971)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 敏郎 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (60524725)
吉永 正彦 北海道大学, 理学研究院, 教授 (90467647)
村井 聡 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (90570804)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
| Keywords | 超平面配置 / 自由配置 / Hessenberg多様体 / Solomon-寺尾代数 / 有理Cherednik代数 / 准不変式環 / 原始微分 / 対数的ベクトル場 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本年度の最も大きな進展は、本研究費を用いて共同研究者のMisha Feiginを、研究分担者の吉永正彦氏とともに訪問し、有理Cherednik代数と原始微分、超平面配置と準不変式に関する新しい議論を対面で行えたことである。その中で、Feigin氏から得た準不変式の離散化という概念から、原始微分の離散化への具体的なアプローチに関する着想を得ることができた。これを持ち帰り、吉永氏及び榎本直也氏らと共同研究を進めているが、その結果として原始微分の離散化を、一部達成できそうな見通しが立った。これまでの原始微分は多重ワイル配置に対するものであったが、この離散版はその上部構造であるカタラン配置へ作用し、超平面の本数を減らすという意味でパラメータを一つ下げることができ、まさに多重配置への原始微分の作用が重複度を下げることの上部構造として完璧に対応している。これはカタラン配置の自由性が吉永氏によって2004年に証明されて以来、観察的に存在が渇望されていたオペレータであり、20年近い時を経て本研究計画中でその一端をつかむことができたのは、本分野における極めて大きな進展である。
もう少し具体的に成果を述べると、ルート系がABD型である場合に対し、原始微分の離散化を差分作用素を用いて構成することができた。これは差分作用素を巧妙に配置することで、カタラン配置の本数を減らすもしくは保つように定式化した点がキーポイントである。今後ほかのルート系への拡張及び証明の体系化を模索することを考えつつ、現在論文として取りまとめを行っている。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により海外との研究交流が途絶えていたことが本研究計画の一つの大きなネックであった。2021年度は招へい・渡航共に現実的ではなかったところ、2022年度まで本課題を繰り越したことにより、それらが部分的ではあるが可能となった。結果的に本研究費を用いてグラスゴー大学にMisha Feigin氏を訪問することができ、議論を深めることができた。その中で長年の懸案であった原始微分の離散化、上部構造であるカタラン配置の対数的ベクトル場へ作用するような形への定式化へのヒントを得ることができた。これは本研究計画に新たな視点を加えるものであり、海外交流が途絶えていたことのデメリットをリカバーすることが可能となった。以上の理由により、本研究計画はおおむね順調に進展していると判断した。
|
| Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針であるが、上述した通りFeigin氏との議論からヒントを得た原始微分の離散化の可能性という非常に大きな研究上の進展があった。これについては吉永氏、榎本氏との共同研究で、部分的には達成されている。具体的にはルート系の分類を用いた場合、ABD型に対して原始微分の離散化が達成されそうであるという目算を得ている。しかしながらこの証明は座標系に極めて強く依存したものであり、ルート系といった対称性の極めて高い対象に関する結果であることを鑑みると不思議な状況である。またAD型はいわゆるsimply lacedなものであり、B型は群作用軌道を二つ持つなど、全く性質の異なるルート系でありながら、これらに対して離散化が達成されるというのは不可解ともいえる。そこで上記メンバーに必要ならFeigin氏、桑原氏を加える形で、原始微分の離散化の統一的な構成をもくろむ。これについては齋藤の原始微分が関連する平坦構造を中心とする斎藤理論の幾何学的あるいは特異点論的理解が重要な役割を果たすという観察があり、この視点も含めて研究を推進してゆく。
また可能となりつつある海外渡航・海外招へいを積極的に推進することで、研究の国際化・情報発信を強めてゆく予定である。
|
