2022 Fiscal Year Annual Research Report
標準束の複素幾何学; 標準計量の退化と漸近挙動の研究
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21H00979
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高山 茂晴 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (20284333)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 複素幾何学 / 相対標準束 / 標準計量 / 漸近挙動 / Griffiths正値性 / 最小拡張 |
Outline of Annual Research Achievements |
複素多様体間の固有正則写像 f : X --> Yと X$上の中野半正なベクトル束 (E,h) に対し, 高次順像層 R^q f_* (K_{X/Y} x E) の計量的な正値性を研究した. 2000年代後半のCh. Mourougane氏との共同研究により, f が滑らかな場合には, R^q f_* (K_{X/Y} x E) はある標準的なエルミート計量 g を許容し, その曲率は中野半正であることを示していた. また, f が特異な場合にも, f が滑らかな所で定めた g が, ある種の特異計量として拡張されることを示していた. その後の10年余りの期間におけるベクトル束の特異エルミート計量の理論の整理, 発展を受け, 再度上述の R^q f_* (K_{X/Y} x E) を考察した. 結果として, f が滑らかな所の R^q f_* (K_{X/Y} x E) の計量 g は, Y 上のGriffiths半正な特異エルミート計量 G として拡張され, さらに G は極小拡張性 (minimal extension property)をみたすことを示した. 極小拡張性は, 最良評価付き大沢-竹腰型 L^2 拡張定理に密接に関係した, 今後益々重要性が高まるであろう基本的な性質である. 一方,7月下旬には「多変数複素解析葉山シンポジウム」を、11月には「複素幾何学シンポジウム」をともに対面とオンラインのハイブリッド開催した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高次の順像層では初となるGriffiths正値性および最小拡張性を示すことに成功したから。
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Strategy for Future Research Activity |
f : X --> Y を複素多様体間の全射固有正則写像とする. 今後は, 主としてこれまでのファイバー積分に関する写像fの特異点のまわりでの漸近展開についての理論を底空間の次元が2以上の場合に拡充する. 例えば f は半安定(semi-stable)とする. このとき f_*(K_{X/Y}+L) の標準L2計量 g_{L2} がMumfordの意味でgoodであることを示す. dim Y > 1のときが応用上不可欠である. 計量を行列表示したときの対角成分以外の部分の評価が問題である. 技術的な面では, 相対極小モデルへの双有理写像 X - - > X_{min} は一般には正則ではなく, 特に標準 L2 計量 g_{L2} の微分係数を求めることに困難がある. この他にも、多重相対標準束 mK_{X/Y} 特有の標準計量であるL^p計量, p=2/m, を研究する. 一般のmでは0<p<1となり, 関数解析の一般論の適用外であるが, 幾何学的な設定から出発していること, 多重標準束由来であることを利用することで興味深い理論が展開できそうである.
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Research Products
(4 results)