2021 Fiscal Year Annual Research Report
New development of analytic torsion invariants
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21H00984
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 謙一 京都大学, 理学研究科, 教授 (20242810)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 解析的捩率 / エンリケス多様体 / モジュライ空間 / 保型形式 / ラプラシアン / 固有値 / リーマン面 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)新しい解析的捩率不変量を高次元Enriques多様体に対して定義した。特に、超Kahler多様体を普遍被覆空間に持つ超Kahler型Enriques多様体の場合に、構成した不変量がモジュライ空間上の反不変MBM軌跡(周期写像の像として表されない点から成るモジュライ空間上の因子)のみに特異性を持つ保型形式で与えられ ることを示した。Enriques曲面から構成されるEnriques多様体や超楕円曲線から構成されるCalabi-Yau型Enriques多様体に対して解析的捩率不変量を計算し、それらがモジュライ空間上の古典的な保型形式で表示されることを示した。(論文準備中)。
(2)代数多様体の1変数退化族と中野半正な正則ベクトル束と相対標準束のテンソル積に対して、解析的捩率の退化が漸近展開を持つことが知られている(arXiv:1007.2835)。Eriksson-Freixas i Montplet-MourouganeによるHodge束のL2計量の退化挙動の決定を用いて、係数束が自明束の場合に解析的捩率の漸近展開の発散項を特異点に由来する特性類と極限混合Hodge構造へのモノドロミー作用を用いて決定した。また、特異ファイバーが孤立特異点のみを持つ場合に、解析的捩率の漸近展開の主要項を同様の不変量を用いて決定した(上記論文を改訂中)。
(3)代数多様体の1変数退化族に対して、誘導計量に関するラプラシアンの固有値がパラメーター空間上の連続関数になることは知られていたが、収束のスピードに関する精密な結果は知られていない。Riemann面の1変数退化の場合に、0に収束するラプラシアンの固有値がパラメーター空間の座標tを用いて1/(-log |t|)の適当な冪により上と下から評価されることを示した(X. Dai教授(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)との共同研究で、論文準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しい解析的捩率不変量の構成は本研究課題の大きな柱であるが、Enriques多様体に限られているがその構成ができた。新しい不変量、特に対応する保型形式の構造解析はこれからの重要な研究課題である。また、遷移に関するBCOV不変量の挙動を解析するための手段として解析的捩率の漸近挙動について理解が深まった点も進歩である。その応用として、従来の手法では手の届かなかったラプラシアンの小さい固有値の詳細な解析についても(まだRiemann面の場合に限定されているが)大きな進歩が得られた。以上から、研究の進捗状況は概ね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Enriques多様体に対する新しい解析的捩率不変量の構成についてなるべく早く論文にまとめて公開する。併せて、得られた保型形式の構造解析を進め、超Kahler多様体のモジュライ空間への応用を探求する。特に、超Kahler多様体の倉西空間の次元の一様有界性の問題に対する応用を考える。また、解析的捩率不変量の漸近挙動に関する結果、及びコンパクトRiemann面の1変数退化に対するラプラシアンの小固有値の漸近挙動に関する結果についても早急に論文にまとめて公開する。最後の結果を高次元に拡張するために、代数多様体の1変数退化族に対して微分形式に作用するラプラシアンの固有値のパラメータ依存性を調べる。
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Research Products
(2 results)