2022 Fiscal Year Annual Research Report
Equations with renormalization and stochastic analysis
Project/Area Number |
21H00988
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
楠岡 誠一郎 京都大学, 理学研究科, 教授 (20646814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 壮登 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (20823206)
永沼 伸顕 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (60750669)
伊藤 悠 京都産業大学, 理学部, 准教授 (70779214)
田口 大 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (70804657)
河備 浩司 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (80432904)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 特異確率偏微分方程式 / 確率微分方程式 / 確率量子場モデル / マリアヴァン解析 / ディリクレ形式 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度及びその繰越期間は、自己交差相互作用を入れた3次元ポリマー測度に対応するディリクレ形式の構成について主に研究を行った。ポリマー測度は経路空間上の測度であるため、これは無限次元空間上にディリクレ形式を構成するということになる。このモデルはEdwardsにより提唱されたのであるが、その後Symanzikによって形式的ではあるがΦ4モデルとの関係が得られたため、確率量子場の話題として注目を集めたものである。 この3次元ポリマー測度に対応するディリクレ形式の構成は、途中まで議論されたプレプリントはあるものの、未解決のまま残されていた問題であった。これに対し、本研究では既存の文献において解決済みの部分、本質的に解決している部分、本質的に未解決である部分を明確にした。また、この話題について過去に研究を行ってたドイツのボン大学名誉教授であるAlbeverio氏を共同研究者に加え、先行結果や以前の研究の流れなどを教わりながら研究を進めた。2022年度及びその繰越期間ではディリクレ形式の構成のために必要な評価について明確にし、さらにその評価を得るために困難な点を明確にした。あとは評価を可能とする計算方法を見つけることができればこの問題は解決する状態である。 また、この3次元ポリマー測度について、新しい構成方法も考えている。既存の構成方法では2つの近似を用いているが、新しい構成法では1つの近似のみを用いる。この場合は既存の計算手法と計算が異なるが、似た計算が可能であることが分かり、また困難が現れる点も似ていることが分かった。この新しい構成法は3次元ポリマー測度の確率量子化を行う際に便利であると考えている。 さらに、2022年度はIsmael Bailleul氏と星野壮登氏の準線型KPZ方程式に対する特異確率偏微分方程式の手法によるアプローチの研究にも協力した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は主に、Bolthausen氏による既存の構成法により得られた自己交差相互作用を入れた3次元ポリマー測度に対応するディリクレ形式の構成についての研究を行い、1つの評価を除いて必要な評価ができることを確認した。この1つの評価を除いても、既存の論文やプレプリントで行われている様々な既存の計算を修正する必要があった。残りの1つの評価は最も難しい部分なのであるが、3次元ポリマー測度がウィーナー測度と互いに特異であることがこの困難の背景にあると考えている。これについては引き続き計算を行い、この問題の解決を目指す。 また、Bolthausen氏の構成法でない、新しい構成法に関する研究も順調に進んでいる。この場合も既存の場合と似ているが異なる計算が現れるため、全ての計算をやり直す必要がある。大量の計算が必要になるが順調に計算が進んでいる。この新しい構成法は、ポリマー測度の確率量子化といった新しい方向にこの話題を発展させる可能性を含んでいる。これについても引き続き研究を進める。 2022年度は共同研究者であるドイツのボン大学名誉教授であるAlbeverio氏が体調を崩したため、氏を訪問することができなかった。そのため、2022年度の研究費の繰越を行った。繰越期間である2023年にAlbeverio氏を訪問する予定を立てたが、出張直前に氏が再び体調を崩したため本人に会うことができなかった。しかし、ご家族の協力を得てAlbeverio氏の書斎で本研究に関するメモをコピーさせてもらい、これを用いて本研究の問題背景などをまとめた。これにより、この研究に関する論文が一部の計算を除いて完成した。 以上のような理由から、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究費の繰越期間中である2023年度は、2022年度にできなかった研究活動と当初2023年度に計画していた研究を同時並行で行った。特に、2022年度にできなかったAlbeverio氏との研究打ち合わせを行い、同時に2022年度に行った研究の続きを行った。これにより、2022年度の研究で残っていた、自己交差相互作用を入れた3次元ポリマー測度に対応するディリクレ形式の構成のために不足していた評価は2023年度の研究で無事に解決しており、この研究成果は論文としてまとめ、現在学術雑誌に投稿中となっている。 これにより、2023年度の研究計画は予定通り遂行できたといえる。この研究実績の報告は2022年度のものであるが、この報告を書いている現在は2023年度の研究も遂行済みのため、ここでは今後の研究の方策については記述しない。2023年度の報告において、今後の研究の推進方策を記述する。
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