2021 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamics of solutions of nonlinear parabolic equations and front propagation phenomena
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21H00995
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
俣野 博 明治大学, 研究・知財戦略機構(中野), 特任教授 (40126165)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 非線形偏微分方程式 / 移流拡散方程式 / 自由境界問題 / 特異極限 / 解のダイナミクス / 方程式の縮約 / イオンの運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
【金属腐食(corrosion)の数理モデルの研究】 これは,塩水に接する鉄の表面に小さな穿孔が生じて成長するメカニズムを数理的観点からきちんと理解することを目的に,フランス原子力・代替エネルギー庁の F. Rouillard氏(化学者)のチームおよびフランスCNRS/パリ・サクレー大学のD. Hilhorst氏らと共同で進めてきた研究である.このたび,この研究の第一段階の成果として,数理モデルの導出と数値シミュレーションの結果をまとめた論文"Anodic dissolution model with diffusion-migration transport for simulating localized corrosion"が完成した(投稿準備中).この論文で考察したモデルは,水溶液中のイオンの運動を記述するPoisson-Nernst-Planck系(一種の移流拡散方程式)に化学反応項を加えた方程式に対する自由境界問題である.簡単のため空間1次元の場合を扱った.水溶液中にはプラスやマイナスの種々のイオンが混在しており,それらが空間領域内の各場所で常に電気的中性条件を満たすが,これは無電荷状態とはまったく異なり,静電ポテンシャルは一般に調和関数にはならない.この点を誤解した研究が専門の学術誌にも非常に多く見られる.本論文では,そうした誤りについて注意を喚起した上で,正しいモデルの数理構造について体系的な説明を行うとともに,そのモデルの数値シミュレーションと実際の実験データを比較する考察を行った.本研究は,金属腐食の専門家と数学者が共同で行った融合研究として大きな意義があると考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は,繰越金を用いて「無数の穴があいた壁を透過する平面波」の研究を完成させる予定であったが,金属腐食(corrosion)モデルの研究が大幅に進展する見通しが立ったため,こちらの方を先に完成させた.今回書き上げたcorrosionモデルの論文は,基礎方程式の体系的な導出に加えて,数値シミュレーションと実際の実験結果との比較も詳細に論じており,次の段階である縮約モデルの研究に向けて十分な下地を作ることができた.研究は,きわめて順調に進んでいる.
壁を透過する平面波の研究については,corrosionモデルの研究を優先させたためしばらく中断していたが,年が明けてからフランス側との共同研究を再開した.内容的にはほぼ完成しており,あとは細部をつめて論文を書き上げる作業が残っているだけであるが,さらに解の初期値のクラスをより一般化した新しい結果を付け加えるかどうかについても検討中である.いずれにせよ,2023年度の前半には壁を透過する平面波の論文も投稿できる見込みである.全般的に,研究は順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
ここでは金属腐食(corrosion)のテーマについてのみ述べる.他のテーマの今後の進め方については,2022年度の実績報告書に記載した.
【金属腐食(corrosion)のテーマについて】 今回完成した論文で導出した数理モデル数理モデルには,異なるスケールを有するパラメータが幾つか介在している.このパラメータの大きさの違いを利用して方程式を縮約し,より簡単な方程式で元のモデルの振る舞いを近似する研究を進める.数学的により正確に述べると,方程式内のパラメータの比を無限大に飛ばした特異極限で得られる方程式が縮約モデルである.すでに2年以上前に縮約モデルの候補が一つ得られており,その解析も進んでいたが,適用できるパラメータの範囲が限られており,このパラメータの範囲が現実の腐食現象で観察されるパラメータの範囲と整合するかどうか,はっきりしなかった.これにコロナ禍が加わり,縮約モデルの研究は中断していたが,最近になって新たな縮約の仕方が見つかった.この新しい縮約モデルは,より広い範囲のパラメータに対応できる可能性が高いので,今後は,以前の縮約モデルに加えて,新しい縮約モデルの解と元の方程式の解の比較に関する研究を進める.この研究は,ペンシルベニア大学の森洋一朗氏およびフランスのDanielle Hilhorst氏らと協力しながら,理論的解析と数値シミュレーションを併用して行う.当面は3イオン系の縮約モデルを扱うが,その研究が完成した段階で,6イオン系の縮約モデルの研究を開始する予定である.
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[Presentation] Memory of Mayan2021
Author(s)
Hiroshi Matano
Organizer
ReaDiNet 2021: An Online Conference on Recent Topics in Reaction-Diffusion System, Biology, Medicine and Chemistry
Int'l Joint Research / Invited