2022 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamics of solutions of nonlinear parabolic equations and front propagation phenomena
Project/Area Number |
21H00995
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
俣野 博 明治大学, 研究・知財戦略機構(中野), 特任教授 (40126165)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 非線形偏微分方程式 / 反応拡散方程式 / 進行波 / 解のダイナミクス / 波面の伝播 / 感染症モデル / 界面運動 / 特異性 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)【感染症伝播モデルの研究】 フランスのQ. Griette氏と以前から進めていた野生型(wild type)と変異型(mutant type)の病原体が介在する感染症モデルの研究が,当初の目標を大幅に拡張した形で完成し,論文にまとめた(投稿準備中).当初扱っていた感染症モデルは,未知関数が2つの反応拡散系であり,解の値が小さい範囲では協調拡散系,解の値が大きい範囲では競争拡散系の性質をもつという極めてめずらしい特徴を有していた.今回,これをより一般のd種反応拡散系(d>1)に拡張する形で研究を完成させた.より詳しく述べると,解が小さい範囲では協調系,解が大きい範囲では競争系の性質をもつ一般のd種反応拡散系(d>1)で空間周期的な係数をもつものを考え,進行波の存在やその定性的性質を一般的な視点から明らかにするともに,コンパクトな初期値から出発した解の波面の広がり速度が進行波の最小速度に一致するかどうかという問題を肯定的に解決した.また,この研究の副産物として,一般の2階楕円型微分作用素の主固有値に関する新しい評価式を確立した. (2)【波状境界をもつ帯状領域における界面運動の研究】 この研究テーマは,周期的な波状境界をもつ無限帯状領域の上で曲線の曲率運動方程式 V=κ+A を考え,進行波の存在を議論するのが目的である.境界の凹凸部の角度が45度を超える場合は,曲線が端点以外の部分で境界にぶつかって特異性を発生する状況が生じると予想されるが,このような特異性を生じながら進む進行波の存在は,これまで知られていなかった.今回,曲線が特異性を生じる時刻が離散的であることが証明できたので,特異点を発生しながら進む進行波の存在証明を近いうちに完成できる見通しがついた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感染症モデルの研究は,当初の計画以上に発展した形で研究を完成させることができた.帯状領域における界面運動の研究については,曲線が特異性を生じる時刻が離散的であることが証明できたので,最大の懸案が解決した.これにより,2023年度前半には研究を完成することができる見込みである.特異点を生じながら進む曲線進行波の研究は,これまで前例がなく,この新しい現象の理解が一気に進むと考えている.
オーストラリアのY.Du氏と進めている多次元空間における波面の広がり現象(球対称テラス解)の研究は,非線形項 f が多くの零点をもつ反応拡散方程式を扱っている.定常解 u=0 が安定である場合は研究科すでに完成しており,u=0 が不安定な場合に未解決の技術的問題が一つ残っているだけであるが,2022年は他のテーマの研究を優先させたため十分な議論ができなかった.2023年度に本格的な研究を再開する予定である,
なお,本課題研究は,多くのテーマを扱っているため,テーマによって研究の進捗状況が異なるが,すでに完成して投稿準備中の論文や,近いうちに完成できる見込みの研究が幾つかあるので,全体的には,ほぼ順調に研究が進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
金属腐食(Corrosion)の研究テーマの今後の進め方については2021年度(繰越金)の実績報告書に記載したので,ここでは他のテーマについて述べる.
【壁を透過する平面波のテーマについて】 壁に空いた穴が周期的に部分布している場合については,ほぼ研究は完成しており,現在は,穴が有界な範囲に局在している場合を考察している.この場合もすでに主な問題は解決しており,2023年度前半には両方のケースをまとめた論文が仕上がる見込みである.その後は,穴の大きさと穴どうしの間隔のそれぞれを同時に限りなく小さくしていった均質化極限について研究を進める.穴の大きさと穴どうしの間隔の間にどのような関係が成り立てば,均質化極限において平面波が壁を透過できるかを明らかにしたいと考えている.この研究は,将来的には化学や生物学の問題に応用できると期待しいる. 【波状境界をもつ帯状領域における界面運動の研究】 特異点が生じる時刻が離散的であることがすでに証明できたので,まず論文を早期に完成させる.現在は境界が比較的単純な形状である場合(先端部分が凸である突起が周期的に並んだ状況)を扱っているが,境界の形状がより複雑な場合や,帯状領域内に障害物が数多くある場合を研究する.境界の形状が複雑になると,特異性が発生する時刻が離散的かどうかは,今のところわかっていない.この問題をさまざまな角度から検討する. 【多次元空間における波面の広がり現象の研究】 残っている技術的な問題は1つに絞られているので,その早期解決をめざす.なお,仮にこの問題がそのままの形で解決できなくても,現在完成している部分だけでも十分発表する価値があるので,どのような形で研究をまとめるか,状況を見ながら今後検討し,2023年度中に論文を投稿する予定である.
|
Research Products
(4 results)