2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H01031
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
服部 一匡 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (30456199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楠瀬 博明 明治大学, 理工学部, 専任教授 (00292201)
柳 有起 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70634343)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 四極子秩序 / トリプルq秩序 / 異常ホール効果 / 非線形応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究は,PrV2Al20におけるtriple-qの四極子八極子秩序,磁気四極子によるスピン軌道運動量ロッキング機構の提案,異方的磁気双極子による異常ホール効果,ホールドープシャンダイトにおける磁気および輸送特性の研究,非線形応答関数の微視的な定式化など,種々のシステムにおける解析を多極子をベースにしつつ行った.以下では,これらのうちの3つを紹介する. (1) PrV2Al20におけるtriple-qの四極子八極子秩序(服部):四極子近藤系物質であるPrV2Al20の2つの低温相の候補として,triple-q多極子秩序を提案した.四極子秩序の異方性がtriple-q秩序を安定化させ,さらにtriple-q八極子秩序と共存する相への二段転移を引き起こすことを明らかにした.温度ー磁場相図における相の数や臨界磁場の大きさなど,結果の多くはPrV2Al20での実験と定性的に一致することがわかった. (2) ホールドープシャンダイトにおける磁気および輸送特性の研究(柳) 第一原理計算を用いて,ホールドープしたシャンダイトCo3InxSn(2-x)S2の磁気及び輸送特性を調べた.解析の結果,報告されているInのドーピングによる異常ホール効果の非線形な減少を,仮想結晶近似により強磁性モーメントの線形な減少に対して再現することができた.また,フェルミ面上のバンドのパリティ状態が大きく変化することで,異常ネルンスト効果が符号を反転させ,かつ増大することも明らかにした. (3)非線形応答関数の微視的な定式化(楠瀬)様々な応答テンソルの任意の成分が発現するのに必要な本質的なモデルパラメータを同定する系統的な手法を提案した.ケルディッシュ形式とチェビシェフ多項式法を用いて,応答テンソルをモデル非依存部分と依存部分に分解し,後者を用いて本質的なパラメータを抽出する微視的な定式化に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた成果の他にも,2021年度にすでに論文として出版された成果や,まだ論文が出版されていないがかなり研究が進んでおり,2022年度の早い段階で出版,もしくは投稿まで進むことが可能な課題が複数存在している,例えば, U系化合物における電気磁気効果の研究として,UNi4Bにおいて長年信じられていた磁気トロイダル秩序に変わる電気磁気効果の異方性と種々の物性を定性的に正しく記述する可能性のある,新しい秩序状態に関する研究が大きく進展した.実験から提案されている結晶場状態を採用し,適切な相互作用を導入することで,磁気秩序の形成が結晶場状態固有の四極子自由度により大きな影響を受けることを見出した.歪んだかごめ構造をとるURhSbでは,これまで未知のままであった秩序変数が四極子秩序であり,さらに低温で強磁性に転移することを理論的に明らかにした.また,四極子秩序化での交差相関について詳細に調べた結果がすでに得られており,早期に論文として投稿可能な状況である.これらのことを総合的に考慮し,研究の進展は特に問題ないレベルにあるということが言える.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度中は依然として厳しいコロナ禍の状況下で研究を行う必要があり,分担者3名の構成員の間ですら対面での議論ができる機会が限られていた.2022年度(5月現在)は2021年度に比較すると,社会の対応のレベルとしてもかなり緩和されてきていることが期待でき,分担者の所属機関の変更があったとはいえ,一歩進んだ濃度の議論が可能になると思われる.2021年度はその意味で,構成員の強力な協力のもとで進められた研究というよりは個別に進めた研究成果(議論は深めたが共著にはなっていない)であり,2022年度はあらためて強い意志で協力し研究を進めていく予定である.具体的には,四極子秩序を含む多極子一般の物性や新奇な応答の提案や具体的な物質に即した物性予測,未解明の秩序変数の提案などの研究を進めていく.コロナの状況が改善傾向にあることから,小規模の研究会などを通して構成員以外の多くの研究者とも議論を深め,実験の研究者などからの新しい情報を更新する機会を作ることができれば大変有益であると考えており,それらも計画中である.
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Research Products
(19 results)