2021 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical study of transport in solids based on hydrodynamic description
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21H01034
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
多々良 源 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (10271529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸根 順一郎 放送大学, 教養学部, 教授 (80290906)
曲 冠雄 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (00908527)
Akosa Collins 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (10815822)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スピントロニクス / マグノン / 流体理論 / スピン起電力 |
Outline of Annual Research Achievements |
1). スピン軌道相互作用する伝導電子系に対して行った昨年度までの解析では、電子スピンと電流の渦度の結合(スピンー渦結合)がスピンホール効果の原因であることが明らかになった。この事実の発展例として、ラシュバ型のスピン軌道相互作用の場合に、スピン流生成は起きないにもかかわらずスピン密度生成は起こることを共同研究者との理論解析により示した。このことは従来のスピン流生成を基本とするスピンホール効果の解釈の限界を示しており、スピンー渦結合に基づく理解が物理的に自然であることを示している。
2).金属強磁性体をとりあげ、マグノン電子混合系の輸送理論の理論解析を進めた。マグノンの吸収と放出、さらに散乱により電子が受ける力の微視的計算を行った。温度とともにそれらがどう変わるかを明らかにした。これは磁性金属でマグノンにより発生する起電力として観測可能な量である。解析においては、マグノンと電子の多粒子伝搬過程の計算法に新しい手法を確立することができた。複合伝搬関数も、非平衡グリーン関数の記法の上で単独粒子の伝搬関数と全く同様な構造を持っていることが明らかになり、それを用いて多粒子伝搬過程の計算を効率よく行う方法を編み出した。このことは多種の相互作用系の解析に役立つと思われる。
3). カイラル電子系において電流印加によりスピンや角運動量が生成される現象において、その効果が到達する距離の理論解析を行った。結果として、電流とカイラル性が協調して起きる現象であるため電流がない部位ではスピン拡散長という短い距離で誘起スピン密度は減衰することがわかった。ある実験において最近この到達距離はマクロに長いという結果が示唆されているが、現在の解析によりその実験の説明をすることはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、マクロな流体方程式を微視的に量子論から導くことで、金属などの主に電子による輸送現象を記述することである。まずこの方向性が良いものであったことはこれまでの解析により確信できた。これは流体的視点では電子に働く力など、電気伝導度などの既存の線形応答量ではない量を自然に議論することができるためである。いわば電子やマグノンなどの量子的自由度に対して粗視化することでそれらに働く作用を直接的に押さえることができる。このために、その結果として生じる電気伝導度などの既存の物理量を議論するよりも、輸送の過程が直接的に理解できるのである。
流体的記述においても相互作用の扱いは難しく、その計算法の確立は重要である。今回、マグノン電子の複合系の流体記述の解析がストレートに終了したことで、進行は極めて順調である。相互作用効果を取り入れるための解析手法の確立も大きな成果で、今後の進展に優位に働くと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
流体記述における散逸の効果を調べる。一般に輸送現象にはジュール熱などの散逸が伴うが、量子性に起因する永久電流など例外は知られている。磁場により発生する横方向への電流(ホール効果)も、印加電圧と直交する電流であるため無散逸な電流だと通常思われている。しかしこの古典的な効果が無散逸である根拠は薄弱で、局所的な電流密度と電場の関係式(オームの法則の局所的なもの)を満たさない根拠もないと思われる。ホール効果の散逸の有無というこの基礎的な問題を流体的視点に基づき解析を行う。電流密度と電場の関係式が満たされているかどうかを明らかにし、散逸流と非散逸流の差異を理論的に明らかにする。線形応答理論に基づき電気伝導度を磁場の2次まで含めた計算をすることから始める。
マグノン電子複合系の流体記述に関しても、反強磁性の場合や相互作用の高次効果などの解析も行う予定である。
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Research Products
(16 results)